第18話 転生者、正体に気づく

ん…寝てた。

あれ…?ここは…


「目が覚めたかい?」


誰かの声で一気に目を覚ますと、横には扉に持たれかかったような形で眠るレオと、テーブルにケーキが置いてあった。


さらに前を見ると、先程の声の正体。

医師ロネイアが心配そうにこちらを見つめている


そこで、自分がレオと共にロネイアの家に招待された事を思い出した。


「ご、ごめんなさい!眠っちゃってたみたいで!レオ君も早く起きて!」


恥ずかしい感情と妙に申し訳ない感情が混じり、急いで横にいたレオを起こす。


「う、う〜ん?」


目を覚ました彼は、自分でも急に寝たことに驚いたような表情をとった


「す、すまねぇ…寝てたみたいだ。」


「大丈夫だよ。まだゆっくりしていくといい」


優しく対応してくれる彼女を見て私達は感謝の念を抱いた。

しかし、こうもゆっくりしていられない。

コウヤ君を助けにいかなければ。


「ごめんなさい、私達もう行きます。今度改めてお茶でもしましょう!」


そう言うと、彼女は少し悲しそうな顔をしながらも笑顔で私達を見送ってくれた。


その際に、レオは出口とは別方向の部屋の扉が少し壊れかけていることに気付く


「この扉なんか立て付け悪くねぇか?俺が直して…」


そう言って扉に手をかけようとした瞬間____


ロネイアが手を掴み、その扉にすら触れられないようにした


「…ごめんね。私が直しておくからさ、触らないでくれる?」


変わらない口調で喋りかけているが、側から見ている私は『確実に何か隠している』と感じた。

ーーーーーー

「俺が修理下手だと思ってたのかなぁ。結構上手いんだぞ?俺」


「いや違うでしょ。明らかに何か隠してるよあれは」


彼は、私の発言に少し疑問を抱いた様子で首を傾げた。


しかし、私も違和感を持っている。寝る前の記憶がないのだ。

正確に言うと『お茶でもしよう』と言われてからあの病院に入ってからの記憶


まあ、私達が偶然忘れてしまっただけかもしれないが、お互いに釈然とせずに街へ急ぐのだった。

ーーーーーー

「お…コウヤ、起きたみてぇだな。」


「…」


俺の目の前にはいつもと変わらない様子のコトローネが立っていた。


唯一変化しているとすれば、俺が閉じ込められているこの部屋が、今まで見たことのない部屋だということ


それに、辺りから血の匂いがする。

もしかすると、この部屋が処刑部屋とでも言うのか…?


その刹那、自分と対角線状の所に置かれたもう一つの椅子。

そこに誰かが座っていることに気付いた。


「あ〜よく寝た。ん…ここは❓️❓️」


「ヴァーミリオン!?」


俺がその事実に驚くように、縛られていた椅子から前のめりに倒れようとすると、コトローネはそれを止めた。


「それだけじゃねぇぞ、ほら見ろ」


そのまま俺の椅子を別方向に動かす。


俺の前には信じられない光景が


頭が潰され、床に脳や血が浸透し赤黒く染まっている

ハイドアの死体が転がっていた。


当然俺の顔は絶望に染まる。

しかし彼はそんな事など気にしないように軽快に喋り出す


「最初に言ったろ?やめておけって、全部最初から視えてたんだよ」


俺の耳にその言葉が入ったのはそれから少し後だった

到底信じがたい言葉であった為だ。


だったら、全部筒抜けだったのか…?

俺が、俺達がこんな事しなければ彼女は死なずに済んだのか?


そう絶望感の最中後ろを見ると、コトローネは俺を嘲笑うように前に出ると、自身の正体を明かした。


「コウヤ…いや転生者!俺は祖の復活を願う、祖の『視覚』を受け継ぎし『未来視』の特殊魔法を持った男!コトローネだ!改めて宜しく!」


コトローネが祖に関わる男だと知った俺の隣で、俺が転生者…自分の母親が殺した者と同じであるという二つの事実にただ目を丸くすることしかできないでいた。


そんな彼女をコトローネは見つめると、一瞬すでに興味を無くしたような顔をした。


次にハイドアの死体を担ぐと、扉を開けて部屋から出ていった。


「さてと…お前ら飯がまだだったな?今作ってきてやるよ」


そうして扉が閉められた。

蝋燭で照らされた仄暗い狭い空間の中で、静かに震え、怯えたような顔をした彼女に声をかける


「ど、どうした…?さっきまで余裕そうだったじゃねーか」


彼女は息遣いを荒くしながら、全てを理解してしまったとでも言うように口を開いた


「ステーキ…私、今まで肉を食べて…肉を運んで貰ってた…時間が経つにつれて…屋敷の子達は少なくなって…」


その言葉で俺は全てを理解した。


コトローネは屋敷の子供を調理して…挙句の果てにそれを食わせていたんだ。


気付いた途端に自分も吐き気が止まらなくなる。俺は死体を調理した物…それを食わせる手伝いをしていたのだ


二人してさらなる絶望に浸っていた瞬間、壁からミシミシと少しづつ壊れていく音がする。


「……?」


直後、壁は破壊され外から見慣れた顔がこちらを覗く


「コウヤ!助けに来たぞ!」


目の下の隈や涙で濡れた二人の顔を照らしたのはレオとリーファだった。

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