第16話 転生者、怪物を見る②
突然襲ってきた怪物を前に、思わず目を閉じてしまう。
しかし、いつまでたっても何も起きず流れる時間に違和感を感じ、ゆっくりと目を開くと
トウスの姉、ハイドアが鋭利な刃物で怪物を突き刺していた。
刺した所からは止まることなく黒色の液体が流れ出す。
「これで終わりだ怪物め!」
さらに一層深く突き刺すと、まるで風船のように膨らんでから破裂した。周りには墨のような液体が飛び散る。
その光景を見ていると、自然とお腹辺りが痛む。
あー、そういえば俺も同じ死に方をしたんだったな…
「気をつけろ、私は今日だけで2回程アイツを見かけている」
気がつくと横に移動しており、俺を立たせると彼女はそう言った。
さっきの怪物はいったい何だったのだろう…
「ありがとよ…すまん、まだ全く新しい情報は無くて…」
「良い、まだ二日目だろう。くれぐれも奴には気をつけるのだぞ」
お礼を言うと、彼女は少し笑ったような顔をした。
俺らはその場で別れ、俺はそのまま直行で休んだ。
明日は何とかヴァーミリオンに関する情報を見つけなければ。
そして、10日が過ぎた______
あの日から、何一つ手掛かりは見つかっていない。
強いて言うならば、毎日隣の部屋から物音がする
しかし、何度確かめても空室。
次第にその状況にも慣れてしまい確かめる事も無くなった。
「さて…これを部屋の前に届けたら今日の仕事は終わりだな」
コトローネが作った料理を開かない扉の前に置き、自分の部屋に戻ろうとする。
いつの間にか、ハイドアがヴァーミリオンの行方を探り、自分がコトローネを引き付けるという役割になっていたのだ。
しかし、このステーキ…俺らには振る舞ってくれないんだよなぁ…
おかげでこっちは毎日サラダだけのヘルシー生活だよ
「一体この先には何があるのやら…ま、それを調べるのはハイドアの役割か。」
その時、後ろから扉が開く音がした。
次の瞬間に無数の黒い手によって自分の体は拘束され、扉に引きずり込まれる。
「…っ!?何だコレ!?」
無数の黒い手…まさかあの怪物か?
マズいマズいマズい…どうにかして拘束を解かねぇと
でも…流石に…無理…
目の前が暗くなり、彼は開かずの部屋の中に引きずり込まれた。
辺りにはそんな事など無かったかのように静寂が広がっている。
ーーーーーー
「う…う〜ん、どこだ?ここ…」
目が覚めると、一番最初に体の拘束が解かれて自由になった事を感じた。
しかし、目の前は暗闇で覆われており目には何も映らない。だが、確かに人の気配がする。
「…誰かいる?」
光を探るように壁伝いに歩き始めると、足に何かが当たる感覚を覚えた。
次の瞬間。辺り一面に広がる暗闇を切り裂くように光が広がった。
そして、光で照らされた奥の方には赤髪の少年が倒れ込んでいた。側には金の装飾で覆われた剣が突き刺さっている。
その少年はこちらの存在に気付くと、静かに口を開いた。
「…誰❓️❓️」
ーーーーーー
それから数分、ハイドアはコウヤを探していた。
おかしいな。協力者が見つからん。
何故だ、こんなに見つからないということは…もしや既に殺されたか?
…仕方ない、この業界では良くあることだ。愛しの弟、トウスにはそう連絡しておこう。
私は私の仕事に戻らなければ
一人で勝手に納得しながらも、どこかに隠し扉や探していない部屋があるかもと散策を始めた。
「…?」
その時、厨房の方から妙な悪寒を覚えた。
幸い、厨房には今誰もいないようだ。確かめるならば今しかない。
「やはりか…隠し扉があったぞ。私の予感に狂いは無い!」
厨房の床を剥がすと、隠し階段がそこには有った。
慎重に、気付かれないように降りると
常人では信じられないような光景が広がっていた。
「…これは…クソッ!」
ーーーーーー
「レオ君、なんか最近コウヤ君見なくない?」
リーファとレオは変わらず街に蔓延る異変の正体を探ろうとしていた。
特に違和感を感じていたのは、常に街に居るだろうと思っていたコウヤがどこにもいないこと。
実は暗殺ギルドの話を聞いてから、バレたらどうしようと逃げてしまい、その後の話は聞いていないのだ。
…またどっかの路地で頭おかしくなってんのかな
「…コウヤ見ないって…まあ、確かに。」
「でしょ!?早く見つけてあげないと!」
レオが自分の意見に同調し、目的が定まったような感覚がした。
しかし、未だに何も分かっていない。
どうしたものか…
「ねえ、今コウヤって言ったかな。知り合いかい?」
「えっ」
そんな事をレオと話していると、後ろから声をかけられた。
なんか前にもこんな事あったなぁ…
少しデジャヴ感を感じながらも振り返った
「って、ロ、ロネイアさん!?」
「おや、私の事を知っているのかい?嬉しいな。」
知ってるも何も、今まで不治の病だった病気や大怪我を治療してきた偉大なる医者!
ま、まあ私自身は1回も会ったことなかったんだけど…
「それで、コウヤ君の居場所を探してるのかな?手伝ってあげようか?」
「し、知ってるんですか!?」
「脳みそを見た時ついでに…いや、ちょっと色々あってね」
その後、コウヤの居場所を聞き、驚きを隠せないレオと一緒に屋敷へ向かおうとした。
しかしそんな自分達に注意するようにロネイアは引き留めた。
「待ってよ、せっかく教えてあげたんだし…お茶でもしてかない?」
ーーーーーー
そして夜中______
自身が買った奴隷である『ハイドア』に呼び出されたコトローネは広間で椅子に腰をかけ、優雅に紅茶を楽しんでいた。
「…はぁ、ちょっと前に買ったばっかだぞ?」
紅茶をテーブルの上に置くと、テーブルを足で蹴りひっくり返すと、暗闇から刃物を持ち飛んでくるハイドアの奇襲を防いだ。
熱い紅茶がハイドアにかかり、少しの火傷を負わせる。
「…なっ、何故…」
「…紅茶も淹れたばっかなんだが…もういいや。お前、処分しちまうか。」
そこまで言うとコトローネは、本性を露わにするようにサングラスを外すと深い青の瞳でハイドアを見つめた。
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