2話 


 顔を洗い終わった裕翔は、洗面所で朝イチのボサボサ寝癖をワサワサと水で濡らし見苦しくない程度に整えた。そして、洗面所からまたもや寒さを感じずにはいられない冷たい廊下へ気合を入れて歩きだした。行きとは反対側の通路を3分ほど進みリビングへの扉の前に辿り着いた。


 「やっぱり、この家広いのはいいけど季節ごとの寒暖差最悪すぎ……。廊下にも暖房入れてほしいって言おうかな」


 ボソッと独り言を漏らした裕翔は、そのまま目の前の扉を開きリビングへと入っていった。


 ガチャ…バタ、バッタン!!


「うぉっ!?びっくりした……!!!老朽化してんじゃね!?」


 扉を閉める最後の音にビックリした裕翔は防音であるリビングで構わず大きな声をあげた。何しろ、裕翔はリアクションが大きい。それが、本人の良い持ち味かつ個性にはなっているが……。

 朝イチでプロテインを飲むことが裕翔の日課であるため、リビングの扉からだいぶ離れている冷蔵庫が置いてある場所まで歩き始めた。この冷蔵庫まで歩いて1分。このリビングは、人が10人ほど座れる長机が1つ出入り口の扉を入ってすぐのところにあり、その奥にはソファやテレビなどのくつろげる場所がある。しかし、ここの住民はほとんどこの部屋でくつろがない。理由は、広すぎて落ち着かないからだ。

 冷蔵庫まで辿り着き、冷蔵庫の右横にある引き出しからプロテインを作り始めた裕翔はプロテインの粉、サーバーから水を。必要なものを取り出し、長机の上に置き裕翔特製のプロテインを作り始めた。


 「(ヒョコ)僕にもちょ〜だいよぉ~!!」


 右横から声が聞こえ裕翔は振り向くと、ヒョコという効果音がとても似合う可愛くおねだりをしているヤツが1人いた。


 「お〜ちぃ!!ビックリさせんなよぉ〜やっぱり、ちぃも朝プロテイン飲むんだぁ〜

最近朝起きたらもう皆起きてる状態だから、ちぃとこの  時間におはようの挨拶するの割とひっさびさ!!」

 「そんなことより、僕にもちょうだい!!」

 「わかったから怒んないでよ〜」

 「わかったんなら即答してよね(プンプン)」


 僕の言うことが分からないの?(プンプン)といった擬音が聞こえるほど可愛らしいヤツは、山千聡やまちさと。裕翔と共にこの大きな家で暮らしている同居人の1人だ。何かとここの住居人は此奴に弱い。俗に言う小悪魔ギャップ系男子である。顔も可愛らしいから故、皆此奴を甘やかしてしまう…。言わば千聡の手中に1人以外全員コロコロと転がされているのだ。ある1人以外は……。

 裕翔は、完成したプロテインを自分が先に飲むのではなく、やはりちぃに先に手渡した。裕翔も千聡には弱いのだ。


 「ちぃちゃん、ハイど〜ぞ」

 「ありがとぉ〜裕翔、さっすが!できる男ハンサムくんは違うね!!」

 「ハイハイ」


 毎度のことながら、甘やかされる千聡は何時ものように調子のいいことを甘やかしてくれる相手に言い、皆毎度のことで軽くあしらうのがここの日常である。

 プロテインを飲みながら歩き始めた千聡を裕翔が注意しようとしたが、自分のプロテインを作る作業に没頭することにした。千聡に注意してもまぁ、無駄であることは数度の経験から体験済みである。裕翔は、何かと律儀に物事を決めたがる性格であり、決まりや礼儀などはしっかりと行いたいタイプ。一方の千聡は、真逆タイプ。緊張しいの部分があるが一度心を許した相手には決まりごとよりルーズに行動するのがモットーといったマスコット的キャラクターと言っても過言ではない性格である。それを周りは許してしまうから。まぁ、他人に迷惑は掛けない優しいやつであることは確かだが……。


 「俺のも完成〜!いっただきま〜す!」ゴクゴクゴ

 「ほんと〜に裕翔は律儀と言うかなんというか、別にプロテイン飲むのにいただきますとか、いらなくない?まあ、別に関係ないけどさぁ〜」

 「ちぃがユルユルしてるだけだよぉ〜だってほら、こうちゃんも毎回言ってるじゃん」

 

こんな感じの他愛のない平和な会話をしていると、キィーーっと中の様子を伺うような控えめにドアが開く音が聞こえ、談笑をしていた2人は一斉に振り向いた。




 

 






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