第46話 ボス部屋


配信を始めてからおよそ1時間くらい経った。迷路型のダンジョンということもあって迷いに迷いまくった俺は、ようやく迷路のゴールらしきところに到着した。


「ふう、疲れたな。そろそろゴールしたいんだが、この扉を開けたらゴールさせてくれないかな?」


:ダンジョンがそんな優しい訳ない

:ボスかなんか絶対居る


「だよなぁ。大人しくゴールさせる道理もないか。ここでウジウジしても時間を無駄に過ごすだけだし、さっさと進むか」


ここで帰ると今日の進捗は全てパァになってしまうので、俺は仕方なく部屋に入ることにした。



「んっ、重い。くっ」


扉はかなり重く、開くだけでも一苦労だ。

重苦しい音を立てて扉が開き、その奥にはボスが待ち構えていた。


その姿は、ついさっきまで戦っていた奴等と同じような姿をしているが、他よりも体が一回り、二回りほど大きく、その身には鎧を纏い、俺の身長の2倍ほどの長さの大剣を持っていた。


「強そうだな。気を引き締めていかないと」


:鎧着てるし、硬そう

:なんだあの大剣でかスギィ!


扉を開けた状態で、部屋に入らずにボスを睨むが、何故か敵対する様子がない。

俺の存在を気づいてすらいないんじゃないか?


恐る恐る足を踏み出すと、ボスは急に俺のことを睨み、咆哮した。


「グァアアア!」


ソイツは、叫び終えると大剣を引き摺ってドスンドスンとこっちに歩き出した。


「くるぞ!」


こっちに向けて歩き出したのをみて、俺はすぐに戦闘ができるよう、構えた。


敵はリーチが長い分、超近距離には弱いだろうと判断した俺は、相手の懐に向けて走り出した。


「ガァ?」


俺の突然の行動に混乱したのか、敵は一瞬動きを止め、首を傾げた。


こういう鎧を着た敵には、関節を狙うと良いと◯撃の巨◯で学んだので、先ずは大剣を振り回せなくするため肘の関節を目掛けて斬りつけた。


剣は狙い通り肘に命中し、敵は呻き声を上げた。

斬りつけた方の腕は力が入っていないみたいにぶら下がったので、俺の目論見は上手く行ったようだ。


ついでに敵は痛みで怯んでいるようで、ここぞとばかりにもう片方の肘や膝に斬りつけた。


俺の怒涛のラッシュに、敵は崩れ落ちて「カヒュー、カヒュー」と、か細い息が出るだけになった。


:惨めすぎんだろw

:ちょっと可哀想

:はよとどめ刺してやれ



コメントが謎に敵に対して優しい。まあ、半殺しにし続けても確かに可哀想なだけだし、さっさととどめを刺すか。


こいつの首は太く、一太刀では両断することが出来ない。なので、魔力を更に注ぎ、刃を長くした。


とどめを刺すべく剣を振り上げ、首に向かって勢いよく振り下ろした。


ザクッという気持ちいい音がして、敵は煙となって消えた。


「疲れたな。思ってたより強くなくて興醒めだけど、ストレス発散にはなったし十分かなー」


:サイコすぎんだろ

:裕司はサイコパスだって、はっきりわかんだね


なんかメチャクチャに言われてるな。

別に注意するほどでもないし、そのままにして先に進もう。


敵を倒した直後に部屋の端に階段が現れたので、早速突撃しよう。


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