4.待ち合わせ場所は生徒会室です!

 入学式のジャック、という問題は一応解決した。

 その後、滞りなく入学式は継続。

 入学式が終われば、今日は下校ということになっている。

 俺は舘向、水無瀬と少しだけ雑談をした後、教室を後にした。


『入学式が終わったら、真っ直ぐ生徒会室へ!』


 初衣ねえからの連絡。

 特に予定もないし、いつも通り初衣ねえに従う。

 タブレットで生徒会室の場所を確認しながら向かっていく。


「初日から生徒会室にやってくる新入生っているのか?」


 初衣ねえの強引さに、少々呆れてしまう。

 これって、生徒会室の私的利用だよな?

 風紀委員とか文句言うんじゃないだろうか?


「夢にときめけ! 明日にときめけ! 一緒に甲子園めざしましょう!」

「只今体験入部してまーす! 一緒にサッカーやろうぜ!」

「家庭科室でお菓子配ってます! 料理同好会メンバー募集中でーす」

「一緒にUFO探しましょう!!!」


 部活動や同好会の勧誘合戦が繰り広げられている。

 学園側から公式に認められているのが部活。

 認められていないのが、同好会。

 熱量があるのは、部活の方。

 学園から色々と支援があるからだ。

 にしても、


「UFO同好会って、都市伝説レベルのものも作れるんだ」


 改めて、陽碧学園の自由度に驚かされた。

 公式ではないとはいえ、活動自体は認められている。

 それがどんな内容であれ、だ。


「こんなに団体が多いなら、まとめる側は大変だろうな」


 そんなまとめる側の生徒会。

 初衣ねえから言われた待ち合わせ場所に到着した。


「すみません。失礼します」


 生徒会室の重い扉を開ける。

 生徒会室は初衣ねえから何度も写真で見せられたものが広がっている。

 他の教室には絶対ない電子機器や電化製品などもある。


「……朝、出会った御形伊久留君ですね」


 大量の書類を整理している大導寺先輩。

 他にも二人男女それぞれの生徒がいる。


「どうも」

「会長は今職員室にいますので」

「いや、その、会長と待ち合わせをしてるので」

「そうですか。では、ここで待っていても大丈夫ですよ」


 大導寺先輩に席へ案内された。


「会長のお知り合いなら、生徒会役員の紹介もしておきましょうか」

「あ、ありがとうございます」

葉揺はゆる響真きょうま、自己紹介して」

「はーい!」


 女子生徒が元気よく立ち上がる。

 男子生徒はパソコンをいじったまま。


「あたいは、生徒会書記。土浦つちうら葉揺はゆる!」


 出された手を握り返したら、ブンブンと元気よく振り回された。


「そして、こいつが岡本おかもと響真きょうま。会計で、いつもパソコンと睨めっこしてる陰気なやつだ。基本喋りかけても口で会話しないから、何かお願いしたいことがあるならメールを送ること! メールだったら、返信くそ早いからさ!」


 と、土浦先輩が勝手に岡本先輩の自己紹介を済ませてしまった。

 チラッと嫌そうな表情。

 でも構わず、パソコン作業を進めていた。


「そして、私が生徒会会長鐘撞初衣でーす!」


 急に部屋の扉がバシンと強く開かれる。

 騒々しい生徒会長のご登場だ。


「会長、どうでしたか?」

「うん。体育祭は無事に開催することは決定したよ。あとは細かいところを詰めていこうね」

「体育祭?」

「そうだよ、いっ君! わたし、いっ君が楽しめるような体育祭を寝る間を惜しんで考えたんだから! ほっんとに楽しみにしててね!!!」


 ワシャワシャと頭を思いっきり撫でられた。


「やめろって」

「むふふ~、いっ君も晴れて生徒会役員だねー」

「ああ!?」


 初衣ねえの一言に、度肝を抜かれる。


「会長。職権乱用で風紀委員に通報しますよ?」


 大導寺先輩が俺と初衣ねえを引き剝がしてくれた。


「やだやだ掩ちゃんやめてぇーーー!!!」

「……これは全校生徒の前で見せられませんね」

「うひゃひゃひゃ!!! ほんっとおもしろいな、初衣ちゃん」


 呆れる大導寺先輩と大笑いの土浦先輩。

 特に何も反応しない岡本先輩。

 なんというか、一癖二癖あるな、この生徒会。


「今日の仕事はこれで終わりでしょ? ほら、いっ君、一緒に帰ろ!」

「初衣ねえの寮と俺の寮は離れてるだろ?」

「わたしが、送り届けてあげるって!」

「いっ君、てあたいも言っていいのかな?」

「ダメ! それは私だけのものなの!」

「じゃあ、いくるっち。 いくるっちはどの寮なの?」

「僕はマーズです」

「お、あたいもあたいも! じゃあ、一緒に帰れるな!」

「ぐす……私はヴィーナスなの。どうして運命は私達を引き裂くんだろうっ!」

「たまたまです、会長」

「だって、縦割りも違うんだよ! これは陰謀だよ、陰謀! 先生達を訴えてやる!」


 初衣ねえは涙目で俺の身体を前後にブンブン揺らしてくる。

 色々と不満があるようで、俺の事お構いなしにギャンギャン叫んでいた。


「うひゃっひゃっひゃ!!!!!」


 土浦先輩の笑いのツボにはまったのか、床に転げながら大爆笑をしている。

 大導寺先輩は目頭を押さえながら頭を抱えてしまっている。


「会長、そろそろ仕事をしていただきたいのですが」

「掩ちゃん! 私の仕事はこれでもう終わりのはずなんだけど!?」

「いえ、広報委員から別件で生徒会と話をしたいことがあると」

「……断れない内容じゃない!」

「いえ、そもそも断る断らない以前の問題ですが」

「ほらぁ、初衣ちゃん行くよ~」

「御形君は、申し訳ないですが、もう少し生徒会室で待っておいてくれませんか?」

「そうそう。実のところ、今日の仕事はもうないから、本来帰れるはずだったんだ~」

「わかりました。全然かまいません」

「んふ~、もの分かりのいい子はあたい大好きだよ~」

「ねえ! 葉揺ちゃん、いっ君に近づくのはダメ!」


 俺に近づいてきた土浦先輩を引き剥がす。

 そして、初衣ねえは真剣な表情を俺に向けた。


「ちょうどいいタイミングだから、今言いたいことを言っちゃうんだけど」

「へ?」


「絶対に、『』とは関わったらいけないからね」

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