プロローグ 1
街は熱気に包まれていた。
就任1か月後。
とある冬場の週末の午後、市長演説会が開かれた。その会場となった市中央公園は、集まった市民らで辺り一面びっしりと埋め尽くされている。
公園北側の野外音楽堂。
突然始まった大音量のドラムサウンドが空気を切り裂いた。
四つ打ちのダンス・ビートが聴衆の気分を高揚させたのだろう。ざわめきが大きくなる。
榛村がダークグレーのジャケットから赤いネクタイを躍らせて、ステージ上に颯爽と姿を現すと、人々の熱狂的な声が渦を巻いた。
真っ白な歯を見せながら浮かべた彼の笑みが、ステージ上部に取り付けられたオーロラビジョンに映し出され、一際拍手と歓声が大きくなった。
彼が手を振りながらステージ中央の演台へ歩み寄る。
その下手では副市長の門脇圭一が、耳にかかった白髪を吹きすさぶ寒風でなびかせながら、緊張で小柄な身体を硬くしていた。
ステージのすぐ下では横一列にSPの男らが、約3メートルおきに並んでいた。彼らは各々、しきりに周囲に目を走らせている。彼らのリーダーとおぼしき上手の年輩の男が、片耳に指先を当てながらインカムでやり取りをしている様子が見える。
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