第14話 運命の告白

 それから数週間が経った。


 私は響と何度か会うようになり、少しずつ前に進もうとしていた。

 響は大人びていて、自信に満ちた人。

 彼といると、失恋の痛みも薄れていくような気がした。


 「美咲、君が笑ってると嬉しいよ」


 そう言われるたびに、私の心はほんの少し軽くなった。


 ——このまま、私は新しい恋へ進むの?


 そんなある日、私は偶然、蓮と再会した。


 夜の駅前。


 街灯の下、蓮はポケットに手を突っ込み、どこか寂しそうに立っていた。


 「……美咲?」


 驚いたような瞳。


 「久しぶりだね」


 私はできるだけ自然に笑った。


 「うん……」


 蓮の目が、一瞬だけ揺れる。


 その視線が、私の隣にいる響へと向かった。


 「彼……美咲の……?」


 「……うん、今は響と会ってるよ」


 蓮の顔が、少しだけ強ばる。


 「そうか……よかったな」


 それなのに、なぜだろう。


 その表情が、どこか苦しそうに見えた。




 数日後。


 私は響とディナーの約束をしていた。


 でも、なぜか心が落ち着かない。


 ——このまま、この気持ちに蓋をしていいの?


 そんなとき、スマホにメッセージが届いた。


 《今から会えないか?》


 蓮からだった。


 迷った。


 でも——心の奥がざわつく。


 私は気づけば返信していた。


 《わかった。どこで?》


 指定されたのは、思い出の公園。


 私は震える指でスマホを握りしめながら、公園へ向かった。




 公園のベンチに座る蓮。


 夜風が、少し冷たい。


 「話って……なに?」


 私が尋ねると、蓮は深く息を吸った。


 「……美咲。俺、気づいたんだ」


 蓮は私の目をじっと見つめる。


 「お前がいないと、ダメなんだ」


 心臓が、大きく跳ねた。


 「でも、私……」


 戸惑う私の手を、蓮はそっと握った。


 「俺はバカだった。美咲を手放して、他の誰かと比べようとして……でも、結局、誰といてもお前のことばかり考えてた」


 「……蓮……」


 「やり直したい。もう一度、お前と」


 ——遅いよ。


 そんな言葉が喉まで出かかった。


 でも、目の前の蓮の表情が、あまりにも真剣で——苦しそうで。


 「今すぐ決めなくてもいい。でも……お前の答えを待たせてほしい」


 そう言って、蓮は私の手をぎゅっと握りしめた。


 私の心は、ぐらぐらと揺れる。


 ——私は、どちらの手を取るべきなの?

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