第10話 運命を揺るがす再会

 蓮が旅立ってから、1年が経った。


 私は仕事に打ち込み、自分を磨き続けた。

 ファッションも、メイクも、言葉遣いも——以前の私とは違う。

 堂々と意見を言えるようになり、同僚たちからの信頼も厚くなった。


 だけど、蓮のことを忘れた日は一度もなかった。


 そんなある日、カフェで友人とお茶をしていたとき——。


 「……あれ?蓮?」


 思わず声が漏れた。


 店の奥の席。見覚えのある後ろ姿。


 ——間違いない、蓮だ。


 心臓が一気に跳ね上がる。


 再会するなら、もっと自信を持って笑顔で——そう思っていたのに。


 でも、目をそらせない。

 どんな顔をしているんだろう?変わったのかな?


 震える手でカップを握りしめた、その瞬間——。




 蓮の前には、一人の女性が座っていた。


 美しい。


 洗練された雰囲気、柔らかな微笑み。

 ロングヘアをさらりと揺らし、上品にカップを傾ける。


 そして——蓮は、その女性に優しく微笑んでいた。


 親しげに話すふたり。

 蓮は、こんな優しい顔をするんだ——。


 それを見た瞬間、胸がギュッと締めつけられた。


 ——何を期待していたの?


 私は何も言えず、ただ遠くから見つめることしかできなかった。




 「待っていれば、また蓮と一緒になれる」


 そう信じていた。


 でも——。


 蓮には、もう新しい誰かがいるの?


 会いたかった。話したかった。


 だけど、今の私が「久しぶり」と笑って声をかけたら、

 彼はどんな顔をするんだろう?


 『美咲、元気だった?』

 そんな軽い言葉が返ってきたら?


 隣の女性を「彼女だよ」と紹介されたら?


 ——そんなの、耐えられない。


 カフェを飛び出しそうになる足を、必死にこらえた。


 「蓮……私、どうしたらいいの?」


 運命の再会のはずが、胸が張り裂けそうになる。


 未来の私が送ってきた、新しい手紙の意味——。


 『あなたは、ある決断をすることになる。』


 それは、このことだったの?

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