深夜のグラスと朝焼けのキス

桜椛 - Ouka -

第1話

失恋の夜



1. 失恋の夜


すみれ(27歳)は、恋人に突然振られてしまう。彼氏は「君とは価値観が合わない」と言い残し、約2年間の交際を終わらせた。その言葉に心が抉られたすみれは、職場でも元気を装いながら、家に帰れば涙を流す日々を送っていた。


ある夜、親友のすずか(26歳)にそのことを相談する。すずかは快活で少しお姉さん気質な女性。

「そんな奴、忘れちゃえ!」という力強い励ましとともに、「今日は飲みに行こうよ!」とすずかが誘い、すみれをお気に入りのバーに連れ出す。

すずかは学生時代からの親友で、何でも話せる唯一の存在だった。




バーに到着した二人。すずかが注文したカクテルを手に、すみれは失恋の経緯を愚痴り始める。

「私、何がいけなかったのかな?」

「すみれ、君は何も悪くないよ。ただ、男を見る目がなかっただけ。」

すずかの軽口にすみれは少し笑い、少しずつ心がほぐれていく。


お酒が進むと、すみれは「どうして彼氏がいなくなるとこんなに寂しいんだろう」と泣き出す。それを見たすずかは、「寂しくなんかないよ。だって、私がいるじゃん」と微笑む。その言葉にすみれは救われたような気持ちになるが、同時にどこか胸がざわついた。




飲みすぎたすみれは、終電を逃し、立てなくなってしまう。

「もう、しょうがないなぁ。今日はうちに泊まりなよ。」

すずかの提案にうなずき、彼女の肩を借りて家に向かうすみれ。歩きながら、すずかの肩に寄りかかるたびに心が不思議と安らいでいく。


すずかの家は、すみれにとっては馴染みのある場所だった。以前何度も遊びに来ているが、今回は特別な夜のように感じられる。すずかが布団を敷いてくれ、「今日はここで寝てね」と優しく声をかける。




寝る前、すみれはふと「私、恋愛が向いてないのかも」と呟く。

すずかは「そんなことないよ。ただ、自分をもっと大事にしてくれる人を選ばなきゃ」と言う。

その言葉が心に響き、すみれは「すずかみたいな人が恋人だったらよかったのにな」と冗談めかして笑う。しかし、すずかはそれを聞いて少し黙る。


「……私は、すみれのこと、大事にしたいと思うよ。ずっと。」

その言葉の意味に気づく前に、すみれは酔いの勢いでそのまま眠りに落ちてしまう。




翌朝、目を覚ますと、すずかが台所で朝ごはんを作っている。すみれは昨夜の記憶が曖昧なまま、「迷惑かけてごめんね」と謝るが、すずかは笑顔で「いいんだよ。お互い様でしょ」と答える。


その朝の何気ないやり取りの中で、すみれはすずかのことをこれまで以上に意識してしまう。親友だと思っていたはずの彼女の存在が、どこか違って見えるようになり、心に小さな疑問が芽生え始める。



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