ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件
しばいぬ
第一章 死の大地とドラゴン少女
第1話 創造(クリエイト)
そこは灰色の世界だった。地面は乾ききってひび割れ、風は砂埃を巻き上げるだけ。生き物の気配も、音も、匂いすらもない。
「……どこだよ、ここ」
口にした声が虚空に吸い込まれる。
全身がだるい。指先に力が入らない。それでも立ち上がる。目を凝らしても、地平線まで何一つない。
なんで俺はこんなところにいるんだ? ついさっきまで……
ああ、俺は死んだんだった。
☆★☆★☆★
鏑木英太(カブラギエイタ)、30歳。
日本でもトップレベルのゲームデベロッパー──そう自負していた。
俺が開発に携わったMMORPGは、リリース初日に数百万人のユーザーがログインし、SNSはその話題で溢れた。運営チームは悲鳴を上げ、サーバー増設を繰り返した。
俺の作った世界に、人々が夢中になっている。あの瞬間の高揚感は、今でも胸の奥に残っている。
そして、新作MMORPG『エターナルコード』の企画を立ち上げた。
ファンタジーの定番。剣と魔法を駆使して戦う、中世ヨーロッパの世界観だが、それはあくまでもゲーム開始時の話だ。世界は何千年もの時を経て変化していく。
人工知能の加速度的な進化。人を超える存在との共存。それこそが『エターナルコード』の真のテーマだ。
『エターナルコード』の世界は終わらない。
どのように進むかは、誰にもわからない。
冒険者、農家、王族、商人、盗賊、呪詛師、プレイヤーは世界に存在する全ての職業を選択出来る。目的も、生き方も、種族も、エターナルコードの世界で起こる全てはプレイヤーが創り上げるのだ。
運営側が管理するのは、システム的なトラブルだけ。プレイヤーの選択を受けて、まるで現実のように筋書きなく物語は進む。それは、人工知能の管理の元、「世界」として永遠に時を刻んでゆく。
鏑木英太の最高傑作になるはずだった『エターナルコード』
俺はその完成直前で力尽きた。
最後の記憶が蘇る。目の前にはモニター、手にはコーヒー缶。意識が暗闇に溶ける直前、キーボードの上で固まる自分の指先を見た。
俺は……なんで死ぬんだ……?
ああ……疲労か?
倒れたんだっけ……くそっ……
とくん、とくん、自分の鼓動が弱まっていくのがわかった。
ほんの数秒前の出来事にも、永遠のように遠い過去のようにも思えた。
☆★☆★☆★
そして、目の前には現実味のない景色が広がっている。しかし夢じゃない。目に映るもの、肌で感じる全てが、これを現実だと言っていた。
荒廃。その一言しかない。ひび割れた大地だけが視界を占領しており、生命体の気配は一切ない。虫の一匹も見当たらないのだ。
「おーい!!」
「だれかー!!」
乾いた喉を鼓舞して叫ぶが、反応するものなどない。
しばらく歩いて、へたり込んだ。どれだけ歩いても景色は何も変わらない。
ここは何処なんだ?
本当に死んだのか?
こんな空の色は見た事がない……異世界じゃないんだから……不意に浮かんだ言葉に息を呑む。
「……まさか、本当に異世界転生か?」
周囲を見回す。現実味は無いが、その答えには一番現実味がある。絶望とワクワクが同時に押し寄せる。異世界転生モノはゲームやラノベで何度も見たが、まさか自分が当事者になるとは思わなかった。
転生モノの主人公はチートスキルを授かるのがお決まりだ。神様からギフトを貰う……ってパターンでもない……パーティを追放されたサポーターが実は最強だった……パターンでもない。悪役令嬢もいないし……え、優遇なしで荒野に放置パターン? そんなのあったっけ?
その時ふと、脳裏に単語が浮かんだ。
「……ステータスオープン」
すると目の前に、半透明のウィンドウが浮かび上がった。
ステータス
名前:鏑木英太(カブラギエイタ)
年齢 : 15
職業:デベロッパー
レベル:1
HP:100/100
MP:50/50
ユニークスキル
•創造(クリエイト)
スキルスロット
1.
2.
名前は生前と同じ鏑木英太だが、年齢が15となっている。着ているものは中世ヨーロッパテイストだし、身体が重くて気づかなかったが、確かに若返った自分のような気もする。この場合は転移という奴になるのだろうか?
そして職業だ。
「デベロッパー?」
唖然とした。いや、笑うべきだろうか。「デベロッパー」という肩書が、異世界転生後の俺にもついてくるとは。PCも何もなくて、どうしろと言うんだ? そこは勇者や冒険者じゃないのか?
しかし、目の前にはシステムウインドウがある。これなら少し納得できる。異世界とはいえ、これはまるで「ゲーム」のようだ。俺はゲーム開発のプロ。未知のシステムでも、解析してみせる。
ウィンドウの隅に、スキル候補らしきリストが表示されていた。
「……創造(クリエイト)?」
ユニークスキルに目が留まる。なんだこれは?見慣れた「魔法」や「剣術」ではなく、まるで開発ツールのような名前だ。
「試してみるか……」
頭の中で「創造(クリエイト)」と唱えると、スキルスロットが輝き、、目の前に新たなウィンドウが浮かぶ。
•剣術
•弓術
•槍術
•体術
•盾術
•双剣術
•鞭術
•斧術
•短剣術
•格闘術
•防御強化
•武器強化
•防具強化
•魔力感知
•武器投擲
•暗殺
•速攻
•戦闘知識
•視覚強化
•聴覚強化
•直感強化
•火魔法
•水魔法
•風魔法
•土魔法
•全属性魔法
•召喚魔法
•精霊召喚
•魔法制御
•魔力抽出
•魔法加速
•魔力吸収
•血液操作
•幻覚魔法
•幻影生成
•防御魔法
•回復魔法
•死者蘇生
•言語理解
•古代語理解
•歴史知識
•地理知識
•生物学知識
•解析
•交渉術
•説得術
•記憶保存
•記憶操作
•隠密行動
•視覚探知
•聴覚探知
•魔法理論理解
•魔法文献読解
•暗号解読
•言語創造
•言語習得
•伝達強化
•鍛冶
•工芸
•料理
•薬草学
•錬金術
•召喚術の鍛冶
•魔道具作成
•ゴーレム製作
•鉱石鑑定
•物理改造
•精霊具作成
•工房の設計
•物質変換
•錬金実験
•触媒使用
•素材採集
•精練
•魔石加工
•魔法結晶製作
•防具設計
•武器設計
•体力回復
•魔力回復
•精神回復
•傷の治療
•毒耐性
•状態異常耐性
•生命力強化
•魔力強化
•病気治療
•精神的支援
•心理学
•幸運強化
•体力強化
•追跡
•罠感知
•鍵開け
•隠密
•騎乗
•速足
•環境適応
•遠距離視
•高速移動
•心理操作
•精神支配
•未来予知
•天候操作
•重力操作
•音波操作
•隠匿
•霊視
•動物との意思疎通
•星の知識
•武器感知
•透明化
•物体移動
•耳栓
•瞬間移動
•魂の感知
•料理
•釣り
•農作業
•採集
•家事
•掃除
•縫い物
•鍵開け
•修理
•整理整頓
•買い物
•レシピ習得
•子供の世話
•介護
•睡眠管理
•自然観察
•音楽演奏
•写真撮影
•簡単な手品
•キャンプ
•風呂掃除
•洗濯
•バランス感覚
•着付け
•身だしなみ
•ジャグリング
•時間の歪み
•記憶の断片
•視覚の歪み
•夢の記録
•鏡の中の世界
•光の感覚
•空気の触覚
•声の響き
•予兆の感覚
•背後の気配
•霧の中の真実
•不安定な平衡感覚
•虚無の感覚
•異世界の余韻
•無意識の支配
•未来の兆し
•現実とのズレ
•音の反響
•浮遊感
•見えない壁
•耳鳴り
•影の気配
•虚無の視界
•記憶の再生
•陰の存在
•感覚の膨張
•歴史知識
•地理知識
•科学的思考
•演技
•警戒心
•戦略的思考
•図面作成
•数学の理解
•プログラミング
•アート
•芸術的感覚
•物語作成
•構図理解
•人間観察
•手話
•語彙増強
•絵画技術
•創造的発想
•音楽理論
•短編小説作成
•統計学
•言語解析
•短期記憶強化
•長期記憶強化
•記録保管術
•精神的強さ
•意識の集中
•心の平静
•自己分析
•感情の抑制
•ストレス管理
•夢の解析
•感情的共鳴
•意志の力
•創造的思考
•想像力強化
•直感力
•社交力
•幸福感覚
•自信強化
•内面の成長
•判断力
•誘惑耐性
•自己肯定感
•本能的反応
•交渉術
•人心掌握
•笑顔の使い方
•恋愛テクニック
•会話術
•相手の気持ちを読む
•チームワーク
•絆作り
•質問力
•立場の把握
•謙虚な態度
•共同作業
•プレゼンテーション
•マッサージ
•リラックス法
•安らぎの声
•落ち着きの空間作り
•精神的浄化
•ポジティブ思考
•ストレス解消法
•呼吸法
•瞑想
•サウンドヒーリング
•アロマセラピー
•感謝の力
•自然とのつながり
•癒しの歌
•優しい眼差し
•穏やかな態度
•安らぎの香り
どうやら、この中から選択してスキルスロットを埋めるようだ。
しかし多い。あまりにも多い選択肢は、親切なようで不親切だ。俺のゲームならこの数の選択肢は作らない。自由度を履き違えている。微妙スキルも多いぞ……『穏やかな態度』なんて、心掛けひとつでどうにでもなるじゃないか。
しかもスキルスロットは二つしか無い。レベルの概念があるから、今後増える可能性はあるのだろうが、当面は二つのスキルで凌いでいくしかないだろう。
となると、ここはファンタジーの基本である魔法だろう。魔物どころか生物の気配すらしないが、持っていて間違い無いだろう。戦闘以外にも多くの利用方法がある。魔法で決定だ。
『火魔法』『水魔法』『風魔法』といった良くある系の魔法スキルに並んで、ひときわ目を引くモノがあった。
『全属性魔法』
──万能。全てを操る最強の魔法。ゲームバランスを崩壊させてしまうほどの提案するぶっ壊れスキルだ。デベロッパーがこれを選択するのはダサいが、異世界を生き抜く為に背に腹はかえられぬ。
「これしかない」
画面をタップするように、無意識にそのスキルを選択した瞬間、俺の体に熱が走った。
スキルスロット
1.全属性魔法
2.
指先に意識を集中すると、小さな火の玉が浮かぶ。手をひと振りすれば、水滴が空中に浮遊する。
「これは……すごい」
まるで新しいゲームエンジンを手に入れた時のような感覚だ。無限の可能性が、手のひらに収まっている。
荒野を見つめ、思わず笑った。
「やれる……これならやれるぞ」
魔法があれば、生き延びることはできる。火で暖を取り、水で喉を潤し、風で埃を払い、土で何かを作れる。
ゼロから創り上げる楽しみもある。
デベロッパーとして世界を創り上げてきた。俺なら出来る。少しずつでいい。この荒野に、俺だけの世界を創ってやる。
「よし……俺の異世界物語の幕開け──」
その時だった。
ドォン……ドォン……
遠くから地響きのような音が聞こえる。地面が微かに揺れ、嫌な予感が背筋を駆け上がる。
「なんだ……?」
顔を上げた瞬間、目に飛び込んできたのは──巨大な影。
黒い鱗、鋭い爪、そして金色の瞳。
──ドラゴン。
ゲーム開発者として数多くのドラゴンを設計してきたが、実物の迫力は比べ物にならない。息をすることすら忘れ、ただ立ち尽くすしかなかった。
「あ、あれは……」
ドラゴンは一直線にこちらに向かってくる。巨体から繰り出される一歩一歩が、地面を揺るがす。
「ちょ、待て……待て待て待てっ!」
その叫びも虚しく、ドラゴンは止まらない。
覚えたての魔法では抵抗なんて不可能だった。
その時、ドラゴンは空に向かって灼熱の炎を吹き上げた。
それが合図だったかのように、ドラゴンは俺を目掛けて突撃してきた。
爆風。轟音。全身に走る衝撃。
視界が白く染まり、耳鳴りがする。
──俺の異世界物語は、早々に幕を閉じそうだ。
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