ーRESETー

深夜 幻夢

第一章 選択の正解




私の名前は、加奈子(かなこ)。

都内の、とある高校に通う、高校二年、17歳。


私には、中学からの親友の優美(ゆうみ)がいる。


優美は、とても頭が良くて、スタイルも良く、可愛らしい。

優美には、中学の時から付き合っている彼氏がいる。

名前は、貴也(たかや)。


私は、貴也の事が好きだった。

だけど、なかなか告白出来ずにいた。

そんな、ある日、優美が貴也の事が好きだと聞かされた。

応援して欲しいという親友の言葉を断れず、私は、ご丁寧に二人の仲をとりもったのだ。


『本当は、私も貴也の事が、ずっと好きだったの』


その言葉が言えなかった。


可愛い優美は、すぐに貴也と仲良くなり、私は、悲しい気持ちを押さえ、それでも親友である優美と、一度は好きになった貴也から離れる事が出来ず、ずっと気持ちを隠してきた。


ある日の学校帰り。

いつものように、三人で学校から帰っている時に、信号待ちをしていた私達に向かって、一台のトラックが突っ込んできた。

居眠り運転だ。


私と貴也は、何とか軽傷で済んだけれど、優美は、トラックの下敷きになり、即死だった。


でもね。

私、その時、フッと思っちゃったの。


『ああ、貴也じゃなくて良かった』


って。


優美が居なくなれば、貴也は、私の事を振り向いてくれるって。


バカね、そんな事、ありはしないのに。


優美を失って、貴也は、元気が無くなり、学校にも、あまり来なくなった。

たまに、学校に出てきた時に、いろいろ慰めてあげたのだけれど、貴也が立ち直る事はなかった。


そして、一ヶ月後。

貴也は、自殺したんだ。


親友を失って、好きな人まで居なくなって、私、ひとりぼっちだ。

そう思った時に、私は、心の中で、こう呟いた。


『リセット!!』




気がついたら、事故のあった、あの日に戻っていた。

私達三人は、交差点で信号待ちをしている。


『えっ……?戻ったの?』


訳が分からないけれど、兎に角、戻れたんだ。

良かった。


そう思った時、こちらに向かってくるトラックが見えた。


『そうだわ!』


「優美!危ない!!」


そう叫び、優美を引き寄せた私は、貴也の呟きに、ハッとなる。


「そっか…。お前が死ねばいいんだ。」


「えっ…?」


訳が分からず、見つめる私の身体を貴也は、ポンと押した。

私の身体の上をトラックが過ぎて行く。


「何度かリセットを繰り返したけれど、一番いいのは、これだって気付いたんだ。」


気を失った優美の身体を抱きしめながら、そう言った貴也の姿をアスファルトの上に倒れた私は、霞む目で見つめていた。




私……何の為に、リセットしたの?






ー第一章 選択の正解【完】ー

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