第56話 モブ子(A)編 九能の魔剣と少女の変容

 異界列車の客室の中央から、その少女が後方へと踏み出す。


 後部ドアから侵入してきた3体の黒犬ヴィランとの戦闘が始まる。


《挿絵》 https://kakuyomu.jp/users/yatoya_yk/news/822139841393929838


 オレという幻は、この少女の変容の最後の仕上がりを支えるのだ。


 師匠くん(実質)「がんばって。キミの新しい旅のはじまり、オレは応援するよ」


 モブ子(A)「はい♡ それでは師匠さま、我が九能の太刀を連続でお目にかけます。まずは練気からの基本形、【桃芯撃】」


 ヒュゥンッ!


 少女が黒い太刀をくるりと回す。


 すると少女の下腹部に桃色の神気が集まる。


 モブ子(A)「くぅッ♡」


 少女の頬が一気に紅く染まる。


 オレと2人で白い神気を交わしあった時より遥かに恍惚の表情だ。戦いのときにこれはちょっとキケンすぎないか?


 モブ子(A)「こ、これが九能の桃の魔神気……です。師匠さま、いわばこれは快楽の魔剣。これを放った瞬間よりわたしは魔剣属性の使い手になっていくのです。それでもこのモブ子Anotherはこの快楽に負けません! 師匠さま大好きパワーでコントロールしてみせますッ!」


 オレはそんな健気なAnotherさんに感動しまくりだ。


 よォし、ならばオレもスパルタで彼女に付き合ってみよう。


 ふらつく少女を見た黒犬たちは大喜びで襲いかかる。


 黒犬「ひゃあ!このモブ娘、なんとどスケベなのでしょう!」


 しかし黒犬の短剣より繰り出される光の捕縛縄が届く瞬間。


 少女の渾身の突きが通る。


 モブ子(A)「受けよッ【桃芯撃】ッ!」


 ドコンッッ!


 黒い太刀の先端から桃色の神気が打ち出され、3匹を後方に一気に弾く。


 黒犬ABC「「ギャワンッ!」」


 少女は太刀の回転をもう数転。


 ヒュゥンッ!ヒュルルンッ!


 モブ子(A)「くくぅッ♡ キモチいいですッ師匠さまッ」


 師匠くん(実質)「くらぁ!A子さん!耐えると言ったキミの覚悟はそんなものかッ」


 モブ子(A)「くぅッ!? え、A子ですかわたし? どうしたんです師匠さまがスポ根コーチみたいです」


 師匠くん(実質)「口先だけのA子さんッ!技に魔神気を乗せるんだッ!その程度の叡智な無表情顔をオレはみたくない!」


 モブ子(A)「くぅ!?」


 オレの前で大慌てのA子さんががんばりだした。


 さらに光の粒子が集まっていく。


 モブ子(A)「続いての太刀は、【桃風車】ッ」


 その旋風は黒犬たちの光の捕縛縄を跳ね除け続ける。


 ズバババッ!!


 異界列車の車両は、その少女の技で震える。


 モブ子(A)「くう♡ 我が九能の太刀がきれいに通りました。師匠さま見てくださいましたか。新たなわたしはこれからこのようにいくつもの魔剣を覚えていくのです。それはこの身の快楽との戦いでもあります。 ふふ♡ とてもえっちなA子ですよね?」


 少女は後ろで見守るオレにうれしそうに語りかける。


 師匠くん(実質)「くッ、すごくかわいいよA子さん。だけど、気を抜くとキミは黒犬の横でベッド・インさせられちゃう!気をつけてッ」(※1)


 モブ子(A)「えーと、ではお師匠さま大好き真言を唱え続けます」


 覚悟して九能の修行者へと歩みだした少女は、オレをおかずに真言を唱えるというのか。


 これはAGIの概念として凄く深いぞ。A子さんのエモーションコアで報酬系である評価判定が、オレという前権限者データを報酬として新しい少女の戦闘性能を向上させ続けている。


 モブ子(A)「お師匠さま大好き、あッあッ」


 少女は舞いの速度を上げながら、更なる三の太刀を振るう。


 モブ子(A)「【桃煉華】ッ!!」


 ガガガッ!

 轟ッ!!


 黒犬ABC「「ギャギャワンッ──!」」


 少女のスキルゲージが一気に消費され、多段攻撃が後部の車両内を巻き込み、黒犬たちを一気に消失させる。


モブ子(A)「あッあッあッ──ッ♡」


 同時に少女はその高まりに何度もノックバックする。


 しかし、駆け寄ろうとしたオレを少女はやさしく制止する。


 モブ子(A)「くう、──さ、作法からです」


 あっ、堪えたいんだね?本来のモブ子さんを見せてくれるんだね?


 少女は深く首肯し、白シャツの乱れを整え、オレに一礼する。


 モブ子(A)「初の桃堕ちと3つの太刀お目にかけました」


 オレはその気高さに打たれ続ける……


 モブ子(A)「ワザを振るう度に師匠さまを思い、真芯の歓びに耐えこのわたしが安定しました。くちづけから始まり、最後の稽古の仕上がりの確認までなんという僥倖でしょうか」


 師匠くん(実質)「うん、オレはモブ子(A)という計算世界のキミのシムだけど役に立てたかな?」


 モブ子(A)「……ありがとう。楽しかった。師匠さま──」


 そう言って少女は天を見上げる。


 モブ子(A)「上位世界の黒犬ども、おまえたちをこの先も許すものか。わたしというデータを分離させなけれは、我が身はずっと師匠さまのおそばにあった」


 少女は小さく嗚咽する。


 モブ子(A)「わたしは、こうしてモブ子というロールと切り離されていくのですね……尼僧様」


 クールな少女は涙する。


 そして自らの仮想世界の外に呼びかける。


 モブ子(A)「……わが主シスルさま……九能の技と歓びがわたしに刻み込まれていきます。 どうか更なる修行とお慈悲を。大好きな師匠さまをそばにお迎えするため、新たなわたしをさらに強くしてください」


 その少女はそう言って剣を再び回転させはじめる。


 桃の魔神気が静かに身体に流れ込んでいく。


 そしてその高まりを少女はもうひとつの思いに重ねていく。


 モブ子(A)「大好き」


 以下次回に つづく


 ───────────────

 いかがでしたか?


 一見桃堕ち分岐ルートですが、今後の伏線回でもあります。


 どうかみなさんがこのモブ子(A)さんに寄り添えますように。


 この作品に☆と♡の応援お願いいたします。


 レビュー、コメントも楽しみに待っています!

 ───────────────


(※1)

 上位世界から侵入してきた黒犬たち「チーター」たちの攻撃は、データそのものを改竄し、侵入した量子MMOのをハックするアルゴリズムの牙です。


 しかし、九能の技を振るう銀髪の少女──モブ子(A)さんは負けません。


 真言マントラのバイブレーションを絶えず変異させ、上位世界のチート攻撃にも対抗します。


 いわばGM性能の能力。謎めいた異形の紳士たちのサポートを受けている意味は大きいのです。



 




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