第47話 未来への希望

 ロデリック、レイナー、ユリウス――そしてガブリエル。

 苛烈な革命で共に戦った四人は、それぞれ胸に秘めた思いをパルメリアへ打ち明ける機会を得た。

 彼らの真摯な言葉は、愛情と敬意が交錯しながら、彼女の胸へ深く響いていく。


 かつては「恋など後回し」と言い切っていたパルメリアだが、今や共和国の大統領という重責を抱えながらも、一人の女性として自分の心と向き合い始めている。


(前の世界では、こんなにも大きな愛情に囲まれるなんて想像もしなかった。でも、あの事故と転生があったからこそ、この国を変える道を切り拓けたのよね……)


 新しい国家体制の下、国の再編は始まったばかり。戦乱の傷跡は色濃く残るものの、混乱は徐々に落ち着き、人々の暮らしも少しずつ日常を取り戻しつつある。

 パルメリアが最終的に誰を選び、どんな未来を共に歩むのか――それはまだわからない。ロデリックが国づくりの道を彼女と共に進むのか。あるいは、レイナーの誠実さが彼女に安らぎをもたらすのか。ユリウスとの熱い共感がさらなる改革の火を灯す可能性もあれば、ガブリエルの揺るぎない忠誠とともに歩む道もある。その全てが、未来への可能性として広がっていた。


 ただひとつだけは確かだ。彼女が見つけた「愛と大義」は両立できる――という事実である。かつては革命のために恋を後回しにしていたパルメリアも、今は「個人の幸福」を手放さずに生きられる社会を自らの手で築こうとしている。だからこそ、誰から向けられる想いであっても、そう簡単には否定しない。


 どんな道を選んでも、「新しい国を守り、育てていく」という使命は揺らがない。仲間たちは彼女を支え、民衆は「大統領パルメリア」に大きな期待を寄せている。その多くの思いを感じながら、彼女は新たな人生へ踏み出そうとしていた。


 かくして、パルメリア・コレットの物語は、ひとまず大団円を迎えたかに見える。だが、共和国の歴史はまだ始まったばかりだ。

 彼女はふと空を仰ぐ。もし「転生して間もない頃の私」に声をかけられるなら――。


(この世界は絶望だけじゃない。ちゃんと希望がある。だから、どうか諦めないで……!)


 苛烈な戦いを乗り越え、「自分らしい幸せ」と「大義」を両立させたパルメリアの未来には、確かな光が射している。彼女が築こうとする国もまた、その光に照らされながら、今まさに新たな時代を歩み始めていた。

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