第33話 奇襲の計画

 王国軍がコレット領へ侵攻を開始したという報せは、パルメリアが抵抗を宣言した翌朝に届いた。

 国境付近や主要な街道には、領民や革命派の志願者たちが急いで防衛線を築き始めている。遠くから響く馬蹄や金属の音が領地全体を不安と緊張で包み込むなか、パルメリアは「前の世界」で学んだ歴史的な知識を駆使し、仲間と共に緻密な戦略を練り上げていった。


(こんな大規模な衝突が現実になるなんて……でも、もう後戻りはできない。今やるべきことはただ一つ、戦うしかない)


 作戦室となった一室には、コレット領の地形図が広げられていた。パルメリアを中心に、クラリス、ガブリエル、レイナー、ユリウスらが集まり、地図上に敵軍の進行ルートや防衛拠点を示す駒を並べ、進攻と防衛のシナリオを練り上げていた。王国軍の装備や訓練はコレット領の義勇軍に比べて遥かに優れており、無策で正面から戦うことはほぼ不可能だ。


「先遣隊との衝突は避けられないでしょう。真正面からぶつかれば、義勇兵たちでは到底太刀打ちできません」


 冷静に報告するのはクラリスだ。彼女は兵站へいたんや医療支援を担当しており、負傷者の救護や補給路の確保を進めつつ、科学的な視点とパルメリアの知識を組み合わせ、新たな対抗策を模索している。


「だからこそ、この森や崖を利用して、敵が予想する正面ルートを避け、側面から奇襲をかけるしかない。装備や訓練で劣っている以上、敵の混乱を誘うためには奇襲が一番効果的よ」


 パルメリアは地図上の特定の地点を指し示す。その場所は険しい崖と深い森に囲まれており、慣れない王国軍にとっては非常に不利な地形だ。「前の世界」で得た知識を駆使し、正面衝突を避ける策を講じている。


「わかりました。私が志願兵をまとめ、短期間ででも剣術と連携を叩き込みます。敵の意表を突く方法としては、十分に可能性があります」


 ガブリエルが立ち上がり、決意を込めて言う。彼は騎士団での経験を活かし、農民や職人、商人たちを指揮するつもりだ。

 レイナーも地元の若者たちを束ねるため奔走しており、下級貴族でありながらその誠実さが士気向上に大きく貢献している。


 ユリウスは革命派のネットワークを駆使し、都市部からの支援者を呼び集め、敵の補給路の攪乱や都市内での蜂起にも備えていた。


「勝算なんて気にしている暇はない。負けるわけにはいかないんだ。俺たちには大義がある。あんな強権的なやり方は、いずれ必ず破綻する」


 ユリウスが力強く言い放ち、パルメリアもうなずく。状況は厳しいが、「前の世界」の知識と仲間たちの力を集結させれば、必ず突破口が見つかると信じていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る