第3話

サァっと風の音がした。

私と叔父の間を桜が舞っていく。

初めて感じる感覚に戸惑いが隠せない。

縁側の何の囲いもない場所でみだらな醜態を晒していると思うと羞恥心に苛まれる。

どう反応していいのか分からないまま、その身を委ねているうちに次第に快楽の兆しが見え隠れする。

しかし、その指先が侵入しようとした瞬間思わず声を上げた。


「…いたっ…」


その声に叔父が手を止める。


「力抜いて。」


そう言われても、できない。

力を抜くどころかますます身体に力が入ってしまう。

それを見兼ねて叔父が言う。


「口、開けてごらん。」


苦し紛れに口を開くと、間髪入れずに叔父の舌が入り込んできた。

引き寄せられたまま叔父に腰を抱えられるような格好で、溶けるような舌遣いに酔っているうちに、どんどんと身体の力が抜けていくのが分かった。

そしてそのまま容赦なく長い指を押し込んでくる。

一瞬苦しいような痛みに仰け反ったが、そのうち自然と快楽が痛みを上回る。

声が出そうになって、思わず我慢した。


「声出した方が楽だよ?」


叔父の向ける笑顔が否応なく“男”を感じさせて私の本能をゾクリとさせる。

それが恐怖なのか快楽なのか分からなかったが、後はもう素直に身を任せるしかなかった。


だいぶ快楽に慣れた頃、身体の芯を貫くようなそれまでにない痛みで声にもならず、思わず叔父のはだけたカッターシャツをギュッと握り締めた。

その痛みをどうしたらいいのか、叔父は先のようには何も教えてくれず、どうしようもなくて、ひたすら我慢しながら歯を噛み締める。


「ごめん、少し我慢して。」


しばらく苦しみに表情を歪めていたが、次第に慣れてゆく快楽にのまれながら思う。

ああ、これが“女”になるということ…

余裕をなくす叔父の顔を見ながら、更に快楽の深みへと堕ちていった。



 夜風が素肌に当たると、少し肌寒くてふと目を覚ました。

素肌の上に掛けられたスーツのジャケットごと、上体を起こすと、叔父はお酒を口に運びながら、また静かに桜を見上げていた。

やはり、その横顔は美しいと思う。

私の視線に気付いた叔父が振り返った。

にこりと微笑んでから、おいでと手のひらをひらひらと振って見せる。

ジャケットごとその胸に飛び込むと、叔父はふわっと私を優しく抱き締めた。

そして、そっと唇を奪う。

アルコールの匂いに一瞬くらりとなりながら、それに応えて吐息混じりに唇を離した。


「そろそろ戻ろうか。」


そう言われて、ほんの少しホッとする。

さすがに戻らないと、誰かに呼びにでも来られてしまったらおしまいだ。

そそくさとまた制服に身を包み、離れを後にする。

その後ろからカッターシャツ姿の叔父が、ジャケットを羽織りながら歩いてくる。


「ああ!弥生!!なかなか戻らないから、今呼びに行こうかと思ってたのよ!何してたの!」


離れへと続く庭先で母に出くわす。


「あ、えっと…」


口籠りながら叔父を見やる。


「弥生が疲れて寝てしまったから、介抱していただけだよ。」


叔父はさらりと正しい嘘を言ってのける。


「もう!そんな格好で寝たら風邪引くわよ!今日は、ここに泊まるから早くお風呂入ってきなさい。」


そう言いながら先に主屋に上がっていく母の後ろでそっと叔父を盗み見る。

叔父は不敵な笑みを浮かべながら、舞い踊る桜吹雪の中でしぃっと指を口に当てる仕草をして見せた。

翌日、目を覚ますと叔父はすでに帰ってしまっていて、昨日の出来事がまるで夢の中のことであったかのような錯覚に陥ったが、下腹部に残る鈍い違和感が妙な現実味を帯びていた。




 あれから叔父には会っていなかった。

祖父の棺が置かれた会場に向かいながら、そっと叔父を見る。


「弥生、キレイになったな。」


「えっ?!そうかな?」


叔父の不意な言葉に思わず背筋が伸びる。


「モテるだろ?」


「否定はしないけど…彼氏は作らない主義なの。」


ふふんと鼻を鳴らす私を見て、叔父がハハと笑った。

ちょっと高飛車過ぎたかなとそっと叔父を見やる。


「やっぱりお前は俺に似ているよ。」


胸がドキンとする。


「仕事主義にかまけて、色恋を疎かにするとことか。」


叔父がニヤッと笑って見せる。

高飛車どころか見栄張ったのも完全に見透かされている。

私は苦笑いしながら、会場へと入った。

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