第20話 入部のための課題
「はぁ……、筋肉痛ひどいわ……」
「千鶴、中学の時は運動やってたって言わなかったっけ? 思ったよりもよわっ」
舞白はピンピンしている。若いと筋肉痛なんてないんだろうな。くそっ……。
「私も大丈夫ですよ? 白川お姉様は、運動しなさすぎるんじゃないですか?」
早乙女もチクリと煽ってくるし。揃いも揃って。くそっ……。
原因はわかってる。姫宮と張り合い過ぎたのがいけなかったのだろう。あいつも煽るからいけないんだよな。
姫宮がこちらを見ながらすっと通り抜けていく。通り過ぎるときニヤッとこちらを見た気がする。みんな煽り過ぎだろー……。くう……。
だけど、ここは我慢だ、私……。
私が一番年上だから。
「ふぅー……。じゃ気を取り直して。舞白はどの部活に入りたい? やっぱり手芸部がオススメだと思うけど、まだ違う部活見学とかする?」
「……いや」
さっきまで楽しそうにしていたのに、なにやら元気が無さそうな返事をしてくる。
「私さ、やっぱり部活に入れないや」
「えーっ、なんでなんで? すごい楽しそうだったじゃない?」
「そうだよ、舞白ちゃん。一緒に部活やろうよ。どっちの体験入部も楽しかったよ?」
早乙女も一緒に説得に入るが、舞白はうつむいてしまった。
「入部するときってさ、親の許可がいるんでしょ……?」
「それはそうだけども。一応、形式上いるだけだけどね?」
「それが無理っていう話なの」
舞白は少し強く言ってくる。なんでこちらが責められるんだろ……。
「いやさ、私に怒られても仕方ないんだけど? お父さんでもお母さんでもどっちでも良いんだよ? 実家が遠いんだったら、郵送してもいいんだよ?」
「だから、違うの。シンプルに『許可』がもらえないって言ってるの!」
「どっちの部活も、そんなお金かかるような部活じゃないんだけど? ただの趣味の延長的な感じで楽しむ部活だし……」
吹奏楽部だったりすると、お金はかかったりするから大変かもしれないけど。ちなみに、私の家はダメって言われちゃったからね……。
お嬢様っぽいことがしたかったのだけれども、色々ダメと言われた結果、結局のところ手芸部に落ち着いた。
「舞白は私と同じ境遇っぽいから、手芸部が最適だと思ったんだけどなー?」
「違うの。うちのお父さんって、すごい厳しいんだよ……」
舞白は声も小さくなって、悪くないのに怒られた子犬みたいに、いたたまれない雰囲気を出している。
「うーん、そんなに厳しいの? そんなの私が説得してあげるよ!」
厳しいと言っても、おそらく私の親父と同じタイプだろう。娘が自分の知らないことをしようとすると、一回噛みついてくるタイプ。自分の予想外の事態が起こると、納得しないのだ。
うちは、特にお金の面で予想外の出費があろうものなら、絶対に納得できなかったけど、手芸部は行けたわけだから。
「……いや、千鶴には出来っこないよ。私の家って、普通と違うもん」
「はは、中二病になるにはまだ若いんじゃない? 普通と違うって言っても、大体みんな同じだからさ。小さいうちは親に逆らえないって思っちゃうんだよねー?」
「そうじゃないんだって……。本当に違うんだって……」
いつも生意気な舞白なのに、お父さんのことを考えるだけでこんなになるのか。もしかして、虐待とかそういうのがあるのかもしれない?
もしそうだとしたら、それこそ私が一肌脱ぐ番じゃないですか?
舞白のお姉様として!
「大丈夫、舞白! 私に任せなさいな!」
不安がる舞白を真っすぐ見つめると、舞白の目は泳いでいるようだった。迷うことなんて無いのに。
「早速、週末行こうか! 善は急げだよっ!」
「……でも、お父さんはアポイントメント取ってからじゃないと話せないんだよ。多分、来月になるかな……?」
「なにそれ!? 親に合うのにアポイントなんているの? お父さんおかしいんじゃない?」
「それに、どんな服装で行くの? ちゃんとした服装じゃないと、お父さん怒るよ?」
「なにそれ? 結婚する前にする親への挨拶じゃないんだからさー? いつもの格好でいいでしょ」
「ダメダメ、ダメダメ! 絶対にダメ! 入学式とかに着るような、フォーマルな恰好でお願い!」
「んー。そうなの? そんなの寮に無いんだけどな……」
「そうしたら、お姉様。今週末はお洋服でも階に行きませんか?」
早乙女がウキウキした顔で話に割り込んできた。
「ちょうど、舞白さんのブラも欲しいですしねっ!」
舞白は頬を赤らめながら、ブルブルと顔を横に振った。
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