爆炎の魔術師

宇万殊儀知錦

第1話 幼き頃の夢

日が沈み、満天の星空が広がる。私は幼馴染の男の子に手を引かれ、手元のランタンの明かりを頼りに、暗い草原を進む。




 私は、胸が高鳴っていた。生まれて初めて、日没後に村の外を出歩いたからだ。こっそり家を抜け出して、村の外まで走った。とても悪いことをしているみたいで、罪悪感もあったけど、それ以上の高揚があった。




「ねえ、フラム。どこまでいくの?」




 私の問いに「いいから、いいから」と答え、フラムは私の手を引いて歩き続ける。




「夜じゃないと駄目だったの?」




「うん。こんな天気の良い夜に、エリカに見せたかったんだ」




「そっか」




 ならもう何も言わない。あとでお父さんに見つかったら、二人で怒られよう。だから今は、この胸のドキドキに身を任せる。




「ついたよ」




 フラムが歩みをとめた。




 辺り一面、真っ暗だ。見上げれば星空。だがそれ以外に何も無い。




「一体ここに何があるの?」




「良いから見てて」


 


 フラムは私にランタンを渡すと、何かブツブツと喋り始めた。聞き取れるが、聞いたことの無い言葉だ。




「空を見て!」




 フラムが勢いよく人差し指を天に向かって突き出す。




 そして数秒後。




「わっ!」




 お腹に響く音と共に、空に色鮮やかな光りが広がり、散っていった。




「すごい……」




「でしょ。炸裂魔法って、こんなことも出来るんだよ」




「綺麗。まるで夜空にお花が咲いたみたい」




「花か……そうだね。花みたいだ」




 フラムは次々と魔法を打ち上げる。赤、黄色、緑と、様々な色の光りが咲き、散っていく。全然悲しくないのに、なぜだか涙が私の頬をつたった。




「エリカ。僕、大好きなんだ」




「えっ」




「炸裂魔法は、小さな爆発を起こすだけじゃない。こんなことも出来るんだから」




「ああ、炸裂魔法」




「うん。だからさ、僕、将来はこの炸裂魔法を研究したいんだ」




「……そっか」




「そしたら、これよりもっと凄いの、見せてあげる!」




 ランタンの明かりで微かに照らされた、フラムのあの笑顔を、私は忘れることは無い。私は、フラムと同じ、自分の出来る満点の笑みで答えた。




「うん、待ってる!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る