第44話 すぐに成功するとは思っていない。時間をかけてやっていくさ
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第44話 すぐに成功するとは思っていない。時間をかけてやっていくさ
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冬がきた。今年は色々あって、随分長く感じた。
ソルバーン村と二キロメートルほどしか離れてないこのラントール城でもいつものように雪が降り出した。
今年の冬はラントール城下、ソルバーン村、ライロン村をいったりきたりになる。
ライロン村ではすでに豆腐工場が稼働している。
その豆腐を湯豆腐にする。
寒い時期の湯豆腐は美味しいよね。
「ほう、これは美味いのぅ」
養父は湯豆腐を食べ、酒を楽しんでいる。
味噌と醤油、どちらで食べても美味しいが、俺は味噌田楽が好きだ。
焼き豆腐に味噌をつけて食べると、なんとも幸せな気分になる。
「そちらの焼いたものも美味そうだな」
「どうぞ、食べてください」
「うむ……ほう、これはなかなか濃厚な味であるな。この茶色いソースの香りが効いているの」
毘沙門党の構成員(子供)が二十人も増えたので消費が激しい。
味噌と醤油は身内だけで食べていたのであまり造ってない。
今年はかなり多くの味噌と醤油を仕込んだ。
ソルバーン村の実家で仕込んでいるので、倉庫が樽で溢れている状態だ。
「カイン様。城主様がお越しです」
シュラード家に古くから仕えている小者のザランさん(六十歳)が、トルク様の来訪を告げた。
「何、トルク様が?」
養父が俺の顔を見た。
俺は首を振って、来訪の予定はなかったと伝える。
「出迎えるぞ、ノイスもついてくるのだ」
「はい」
「それには及ばないよ」
「トルク様!?」
トルク様が食堂に入ってきた。
その後ろからネイルンを抱いたシュラーマ姉さんまで現れた。
俺は察してしまった。
この二人も豆腐料理を食べにきたんだ、と。
「豆腐を食べていたのかい。これはいいところにきたな。カイン殿、やらないか」
トルク様は酒瓶を持ち上げて見せる。
「ほう、それは」
「御用商人のアルタンが手に入れてくれたものだ」
二人は呑兵衛モードに入ってしまったようだ。
「姉さん、いきなりきたらびっくりするじゃないか」
「あら、私がきたらダメだったの?」
「いや、そんなことないけどさ……」
甥のネイルンが手を伸ばしてくるので、抱き抱える。
「ヴァイスは?」
「なんだ、ヴァイスが目的か」
「うん」
我が甥ながら、正直者だな。
まあいい。ヴァイスは食堂の隅で肉を食べている……終わったようだ。
「ヴァイス!」
「ワウ」
ネイルンはヴァイスのモフモフの毛に包まれた。
人見知りするヴァイスだが、ネイルンは問題ない。
それどころか自分からネイルンの面倒を見にいくくらい好いている。
ザランさんの妻のリールさん(五十八歳)がトルク様とシュラーマ姉さんの分を用意をしてくれる。
従者のサルダーンさん(二十二歳)は屋敷の外で待つトルク様一家の護衛の兵たちの歓待をしてもらう。
このクソ寒い中を待たせるのはよくない。
寒さで体が硬くなって、いざという時に護衛が機能しないのはダメだから、屋根のあるところに入ってもらい、火鉢で体を温めてもらう。
ソルバーン村の実家が炭を送ってくれるのは本当にありがたい。
この後、トルク様は豆腐だけでなく、味噌ちゃんこを食べ、酒を飲んでべろんべろんになった。
シュラーマ姉さんは嗜むほどしか飲んでないし、ネイルンはヴァイスの毛に包まって寝ていた。
トルク様がべろんべろんになったので泊まっていくように勧めたが、馬車できているから問題ないと帰っていった。
真冬の海は荒々しくて雄々しいな。
岩を削るような波が打ち寄せてくる。
今日はガラス用の炉が完成したと聞いたので、確認しにやってきた。
火を入れると、温度が上がっていく。
普通の炭より高温になる樹脂炭を使っているが、まだ温度が足りない。
「ハック。温度を上げてくれ」
「はい」
シューやレンたちと同じ孤児で、年少だったハックに炉の温度を上げるように頼む。
ハックはうちの父さんと同じ高熱魔法が使えるし、魔力量も鍛えているからかなり高温を出せるはずだ。
「お、液状になったぞ!」
ドロドロのガラスができた。
これを型に流し込んで板ガラスを作ってみる。
「気泡があるけど、間違いなくガラスだ。よくやったぞ!」
まだ満足いく品質ではないが、無色透明の板ガラスができた。
無色透明のガラスはかなり貴重で、輸入されるもののほとんどは色がついたガラス製品だ。
色がついているのは不純物が混ざっていると言える。
つまり、無色透明のほうが貴重だと判断できるわけだが、気泡のない板ガラスが作りたいところだ。
ここからはトライアンドエラーを繰り返すしかないだろう。
時間がかかってもガラスを製品化するぞ。
ところ変わってラントール城下の屋敷。
今日は新人たちの稽古を見る日だ。
「そんなへっぴり腰で誰を斬るつもりだ!?」
「お前らの敵は、お前ら自身だ!」
「死んでも刀を離すな!」
新人二十人のうち、刀に才があるなら刀を、槍の才があれば槍を、弓の才があれば弓を只管稽古させている。
そういった子供には、手の皮が剥けようとも泣こうが喚こうが稽古を続けさせている。
武の才があるとこのような稽古を苦にしない子が多い。
もちろん、全員がそうではないが、いざという時に自分を守ってくれるのは、日頃の稽古だ。
だから手は抜かない。
逆に武の才がない子もいる。
そういった子には文官や職人への道もあるが、まずは基本の体力をつけるために稽古はさせている。
「立て! 立たないなら死んだも同じ! 飯は抜きだぞ!」
平民の子供―――特に貧しい家の子供は食事に異様な執着を見せる。
限界に達して動けなくても、食事抜きと言われると動き出す。
恐ろしい執着だ。
今回の二十人の中で戦闘センスがあるのは、五人といったところだ。
他の十五人のうち三人は性格的に戦闘は難しいようだが、それでも体力作りは大事だ。
健康な体を作るためにも、よく食べ、よく動く。
これが大事だと、俺は信じている。(個人の考えです)
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食塩水⇒水酸化ナトリウムの件に多くのコメントをいただき、ありがとうございました。
知りたかったのは、食塩水(海水)⇒水酸化ナトリウムが出来るか出来ないかなので、出来ると分かって大変助かりました。
食塩水(海水)⇒水酸化ナトリウムは出来ないよ! と決めつけられると、マジで!? と焦ってしまいました。(;^_^A
あとは化学式のちょっとした知識と魔法という超常の力で可能にする話の流れなので、特に変えなくても問題なさそうでよかったです。
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