第13話

 尾高の両親はとても良い人たちだった。


 既に親を亡くし、頼るものがいない聡美をまるで娘のように迎えてくれた。

 よく聞く嫁姑問題など一切なく、尾高の母親は聡美の体を気遣い、食事の事や身の回りのことを、程よい距離を置いて見守ってくれた。


「何かあれば遠慮なく言ってね」


 社交辞令ではなく、本心からそう言っているのはすぐに分かった。

 父親も尾高同様、穏やかな人で――なるほど、こんな両親のもとで育てば、彼のような素敵な男性が出来上がるのだな……と、聡美は納得した。


 自分には、なんだかもったいないような気がした。


(私みたいな女で、本当によかったのかな?)

 後悔されないよう、せめていい母親にならなければ……



 日増しに大きくなってくるお腹を触りながら、聡美はポツリと呟いた。


「私は大丈夫……あの人みたいにはならないよ。大事にするからね。が一番」


 この子が一番大事—―


 呪文のように言い聞かせる。


 この子が一番大事だ、と。



 キュロンという通知音がした。

 聡美はスマホを取り上げる。


「え?」


【今日の出来事】が更新されました――というメッセージに、驚いてブログサイトを開く。

 閲覧はしていたが、お気に入り登録はしていないはず……


 だが、1woIhのブログはしっかりお気に入りに登録されていた。


(また?どうして?)

 震える指先で、ブログを開いた。


 淡いピンクのコスモスが、青空の下で揺れている画像だった。


『今日、話しかけてもらった。ちょっと嬉しかった。いつも一人だったけど、こんな事でも嬉しい。今日の事、忘れない』


「……」

 いつも一人でいる彼女に、話しかけた同僚でもいたのだろうか?

 喜ばしいはずの内容だが、なぜか薄ら寒さを感じて、聡美は戸惑った。


 なぜ勝手に登録されるんだろう?

 goodボタンを押しただけじゃ登録はされないのに。

 それとも、無意識に何か押してしまっているんだろうか?



 ――その夜、帰宅した尾高にそのブログを見てもらおうとしたが、なぜかお気に入りに入っていなかった。


「そんな……さっきまであったのに!」

「でもどこにもないよ、【今日の出来事】なんてブログ」

「なんで?」


 訳が分からず呆然とする聡美を心配して、尾高は言った。


「もうそんなサイト見ちゃダメだよ」

「でも――」

「じゃあさ。次に来たら、画面スクショしておいてよ。それを俺に送って」


 その手があった!


 聡美は黙って頷いた。


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