第28話
中学生になった。
小学校高学年で後輩達のお兄ちゃんお姉ちゃんとして責任を果たした後、再びルーキーとして面倒を見られる側になる。
それ迄の小学6年間に培った経験や実績、そして目覚め始めたプライドなどの全てが一気に削除された感覚だった。
兎に角、先輩達はお兄ちゃんお姉ちゃんを飛び越えて『大人』に見えた。
今考えれば、身体は大きくなり、男の子なら声変わりしたり髭が生えてきたり、女の子なら胸が膨らんできたり完全な少女とは違う艶が見え隠れはしていても、まるっきり子供でしか無いのだが、その時はあまりの『大人っぷり』に圧倒された。
翌年私達が新入生を迎える段になり、新入生に対して物凄い虚勢をはって大人ぶったポーズをとった時初めて『なるほど………』と理解した。
一番『大人』を感じたのは、入学式で先輩達が校歌を合唱した時だ。
当然ながら小学校での『少年合唱団』では無い。
校歌自体の歌詞やメロディの雰囲気、そして生徒達の声そのものが私達にとっては大人だった。
迫力有る『大人の合唱?』を聴いた私は、自分の幼さが露呈したようで思いっきり小さくなった。
そして先輩達に憧れた。
暫く経ってもっと驚いたのは『恋ばな』が多いことだった。
『誰々さんは誰々さんを好き』『何組の誰君と誰々さんは付き合っている!』『誰々さんは誰々君に片想い!』………
そんな話題の宝庫だった。
先輩達の中には、ルーキーの中にもお気に入りを見つけようと、休み時間、用も無いのに1年生のクラスを物色して回る
私達に、そんな先輩達の来訪がどんな意味を持つのか分かろう筈も無く、何だか嬉しいようなくすぐったいようなウキウキした気分で最初の日々を過ごした。
私は、中学入学と同時に手の包帯を外した。
決して良くなっていたわけでは無いが、中学入学で殻を脱ぐような感覚だった。
勿論あまりに酷い症状の時は巻いて行ったが。
その頃私の手は、既に老婆のような形態になっていた。
特に指と指の股はボロボロで深い皺や黒い痣を作り、まさに苦労した老婆の手だった。
年頃の私には四六時中包帯を巻いていることも苦痛だったけれど、老婆のような手を見られることも苦痛だった。
出来るだけ見られないよう気を配った。
どうしても手を見られるシチュエーションの時は、酷い症状の部分が隠れるように手の置き方や動かし方を工夫した。
その工夫はだんだん癖になり、無意識な行動となっていった。
当然、人前で手を使う作業をするのは苦手だったので、私は人前でする家庭科の細かい作業、例えば裁縫や手芸や料理等もずっと嫌いだと思い込んでいた。
家庭科の時間も、私の代わりにピーターが針で布を突き刺す姿を見ては『ピーターのストレス発散か………』と思いながら遊んでいた。
髪型も少し変えた。
正確にはショートカットを伸びるままにしていた。
中学生になると、部活動が盛んになる。
部活動がメインと言っても良い程だ。
私はどの部活を選択するか慎重に検討していた。
暫く決められない日々が続いた。
ある日、同じクラスの女子が私に声をかけてきた。
つづく
挿し絵です↓
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