第5話 『崩れゆく未来』

第5話:「崩れゆく未来」


ルイス・フィオーレは、暗く湿った牢獄の中にいた。手足には重い枷がはめられ、自由は奪われている。先ほどまでいた城の広間——セラに裏切られ、王の前に引き出された場面を思い返す。


「お前がどれだけ努力しようと、お前は破滅する運命だ」


王は冷ややかにそう告げた。


「運命の刻印は、お前の魂に刻まれている。誰にも変えられない。抗うこと自体が、無意味なのだ」


その言葉が、まるで呪いのようにルイスの心に刻まれていた。


「……本当に、無駄なのか?」


彼は拳を握る。しかし、何度努力しても報われなかった過去が頭をよぎる。刻印を打ち破るために剣を学び、知識を得た。しかし、すべては運命の前にねじ伏せられた。


セラさえも、自分を止めた。


「……セラ……」


彼女の涙は本物だったのか? それとも、ただの哀れみだったのか?


天井の小さな鉄格子から月明かりが差し込む。その光の下、彼は牢獄の壁に刻まれた文字を見つけた。


「この世界は一度壊さねばならない」


それは、かつて自分と同じように抗った者の言葉なのか?


「……壊す?」


ルイスは小さく笑う。世界を壊す方法など、あるはずがない。


しかし、もし——。


その時、鉄格子の向こうから小さな音が聞こえた。


「……ルイス?」


耳を疑った。


「……セラ?」


鉄格子の隙間から覗くと、そこには涙を浮かべたセラの姿があった。


「どうして……?」


「……あなたを見捨てることなんて、できない……」


彼女は震える手で鍵を差し込み、牢の扉を開いた。


「……逃げて」


「なぜ裏切った?」


ルイスの問いに、セラは悲しそうに目を伏せた。


「私の刻印は『繁栄』……私があなたと一緒にいれば、あなたは破滅する。でも、離れれば私は幸せになる……」


「そんな運命、信じられるか?」


「……信じたくない。でも、これまでそうだったの……」


セラの手がルイスの腕を引いた。


「お願い……生きて……」


ルイスはその手を振り払おうとした。しかし、その時、牢の外から騒ぎが聞こえた。


「ルイス・フィオーレが逃げたぞ! 探せ!」


衛兵の声が響く。


「……くそっ!」


セラはルイスの手を強く握る。


「行こう!」


「行くって、どこへ……?」


「……エドガーの元へ!」


ルイスは驚いた。


「エドガーを知ってるのか?」


「……王の城の地下に、すべての刻印の秘密がある……」


セラは涙を拭い、ルイスを見つめた。


「そこに行けば……運命を変えられるかもしれない!」


ルイスの心が大きく揺れ動く。


運命を変えられる?


それが本当なら——。


彼はセラの手を強く握り返した。


「行こう、セラ」


牢獄の暗闇の中、二人は運命に抗うために走り出した。


——崩れゆく未来を、変えるために。

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