第2話 『抗う者』
第2話:「抗う者」
ルイスは静かに息を整えた。木剣を握る手には血が滲み、腕はすでに悲鳴を上げている。それでも、彼は剣を振るうことをやめなかった。
「もうやめなよ、ルイス」
セラの声がした。夕陽に照らされた少女の横顔は、どこか寂しげだった。
「やめない。俺は……運命なんかに負けない」
「……ルイス」
彼は剣を握る力を強める。幼馴染の言葉を振り払うように、再び構えた。
「運命の刻印なんて関係ない。俺は俺の力で未来を変える」
しかし、その言葉にセラは答えなかった。ただ、哀しげに彼を見つめるだけだった。
ルイスが本格的に剣術を学び始めたのは、刻印を知らされた日から数か月後のことだった。
「破滅の刻印? そんなもの関係ねぇよ。腕が立てば生き残れる」
そう言ったのは、町の剣士バルドだった。彼は運命に逆らおうとするルイスを笑いもせず、ただ黙々と剣を教えてくれた。
最初は木剣すらまともに握れなかったが、ルイスは諦めなかった。朝から晩まで訓練を繰り返し、剣の技術を磨き続けた。
「お前、本気なんだな」
バルドは呆れたように笑いながらも、ルイスの訓練を続けてくれた。
だが、町の人々の目は冷たかった。
「あの子、破滅の刻印だろ?」
「無駄な努力さ……どうせ最後は破滅する」
そんな言葉を何度聞いただろう。
だが、ルイスは抗い続けた。
剣術だけではなく、学問にも励んだ。歴史書を読み、計算を学び、貴族の子どもたちが通う学舎に紛れ込んででも知識を蓄えようとした。
しかし、ある日、学舎で本を広げていた彼に、教師が冷たく告げた。
「努力は称賛に値する。しかし、お前は破滅の刻印を持つ者だ。どれだけ学ぼうと、最後は破滅する」
「それでも……!」
「歴史を見ろ。刻印に抗おうとした者がどうなったか」
そう言って教師は壁を指さした。そこには、剥がれかけた古い落書きがあった。
『かつて運命を覆そうとした者がいたが、消された』
ルイスは拳を握りしめた。
抗った者は、消された——。
しかし、それでも彼は立ち止まらなかった。
ある晩、ルイスは町の外れで奇妙な噂を耳にした。
「最近、革命家を名乗る男がいるらしい」
「革命家? 何をするんだ?」
「刻印の支配を打ち破る方法を探しているらしい」
刻印を打ち破る——。
その言葉が、ルイスの胸に強く響いた。
(俺と同じだ……運命に抗おうとしている奴がいる)
ルイスはその男——エドガーを探し始めることを決意する。
彼はまだ知らなかった。
この選択が、彼の運命を大きく変えることになることを——。
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