第38話 なんとかなる

 なんて思っていたそのとき。


「あなたたち、よくもやってくれたわね~~~~♡♡」


 天から声が降ってきた。


 空を見上げると、紫色の雲が不気味に輝き、そこから巨大な影が地上に降りてきた。


 百メートルくらいはありそうな、なまめかしい女性の体に、顔の部分には……ひしゃくの形をした、七つの星が光っていた!


「げっ! まだ生きてんのっ!?」


 これが、七災星アルファの真の姿ってとこだろう。


 顔に着いた七つの星々のうちの一つが、強く輝く。なんかやばい予感がする。


 今までのあーしなら、くじけてしまったかもしれない。


 --でも。


「大丈夫ですっ!」


「たそ!?」


 ルクスたそが、親指を立ててくる。彼女は笑顔だった。


「古来より書物で伝えられています……最後に巨大化する敵は、すぐにやられる運命だって!」


「何その自信!?」


 アルファの顔の七つの星が、二つ、三つと輝きを増やしていく。


 強い攻撃がくる。かなりまずいのでは?


 でも、ルクスたそは笑っている。


「サイキョーカワイイエクソシストに、二人で一緒になりましょう!」


 その顔を見ていたら、なんとかなるように思えた!


「ええい、もう! わかった、やろう!」


 あーしは叫んだ。体に力が満ちてくる!


 そのとき近くに、リゲル君を含めエクソシストたちが降りてきた。


「あっ、生きてた!」


「勝手に殺すな! 異端者が!」


 リゲル君は悪態をつきながら、どぅーちゃむの体を抱える。


「遺体は傷つけさせない。周囲の市民は避難させる。以上だ」


「ん? どゆこと?」


「察しが悪いぞ。言わせるな……」


 彼はいらいらと頭をかいたあと、びしっと巨大なアルファを指差す。


 顔の星が、四つ、五つと光っていく。ヤバい攻撃が来る。時間の問題だ。


「貴様ら二人! その醜い姿で……とっとと七災星を倒してこい!!」


 そう言いながら、リゲル君たちエクソシストたちは散開した。どぅーちゃむの体も大切に扱ってくれている。


 わかった。要するに……めんどいフォローは全部するから、あーしら二人で好きに暴れろってことだ!


「りょ! 行こ、ルクスたそ!」


「はいっ!」


 あーしは、ルクスたそを抱えた。


 巨大なアルファの顔の星が、七つとも光った。


 そのうちの一つから、紫色をした、すさまじい太さの光線が迫ってくる!


「お--っと!」


 あーしはたそを抱えたまま、急いで飛び立った。そこに攻撃が降り注ぎ、火柱が上がる。


 火柱が消えたあとには、直径十メートルくらいの大穴が開いていた。


「あれ、直すの時間かかりそ~~……」


 リゲル君、激おこ確定だね。


「ポラちゃむっ! まだまだ来ます!」


 腕の中のルクスたそが指差すと、二本目の光線が来ていた。あーしらはそれをよける。


 そこにも火柱が上がり、どでかい穴が開く。飛んでよけた先に三本目、四本目、五本目……とドンドン来る。


「わーっと!」


 あーしらはころころ転がりながらなんとか六本目の光線をかわした。しかし、ラスト七本目はよけきれない!


「危ないです!」


 ルクスたそが矢を光線に放った。相手の攻撃が太すぎて消しきれないけど、拡散してあたりに飛び散る。あたりが小さな穴ぼこだらけになった。やっと初撃を耐えきったようだ。


 街がめちゃくちゃだけど、リゲル君たちが一般市民を守ってくれているはず。そこは信じよう!


「たそ、あんがと~!」


 やっと避け切れた……そう安心したのもつかの間、汚い笑い声が聞こえた。


「ギャハハハ!」


 なんだと思ったら、光線で開いた穴の中から、わらわらと小さなアリ頭の悪魔が這い出てきたのだ! 力で作られた一時的な命の雑魚だろうけど……このままだと街中がすぐに悪魔だらけになる。あの大群に暴れられたらもうだめだ。リゲル君たちも市民を守り切れない。


「めんどっ!」


「次も来ますっ」


 ルクスたそが指差すと、アルファの顔はまた光っている。七つ光ったら攻撃が来るってのがわかったけど……一つ、二つ、三つ……さっきよりもペースが早い!


「ダラダラやってる暇はなさそうだね!」


「はいっ」


 攻撃で穴だらけになれば、よける場所もなくなる。悪魔の数も増えて対処できなくなる。街や市民を守るどころか、あーしらが倒される。時間はない!


「次の攻撃でアルファを倒す! 突っ込んで、そんで、ぶった斬る!」


 あーしは、鎌をアルファの頭に向けた。四つ、五つ、六つと星が光る。


「……あの、極太光線が七本来ますけど!?」


「たその矢でそらしてっ!」


「無茶ぶりです~~!」


 たそは大慌てだ。さっき自信満々じゃなかったっけ?


 あーしは鎌を背負い、たそを力強くお姫様抱っこする。


 彼女の手には弓がある。小悪魔式の移動砲台だ!


「もう来るよ、行こっ!」

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