第24話 休み時間 その4

 修学旅行の日程にっていも終りに近づき、タイムカプセルに入れる、写真も十分すぎる位、った頃。

 その日は京都に行く事になっていた。


 グループ行動で、逢佐古おうさこ君とほかの男子2人そして仲良しグループ女子2人と、私がこの修学旅行のグループ。


 行動計画の中にどうしても京都の宇治橋を入れて欲しくて、他の目的地は全てみんなの希望を入れてもらい、私の希望はこの宇治橋一択いったくだった。


 と、言うのも今度、逢佐古君は詳しく分からないけれど、ユースとかで、ドイツにサッカー留学に行く事になって、中学ではもう、会えなくなるらしい。

 その前にどうしても彼に、言っておきたいことがあって。

 で、他の女子に頼み込んだ。


 橋姫伝説。

 伝説は、いくつかあって、鬼女や、嫉妬深い神だとか、どちらかと言うと怖い伝説なのだけれど、それは平家物語辺りからだと分かって、それまでは、橋姫は夫の帰りをずっと待っていて、ついには再開を果たす、といった一途な女の人の伝説だった。


 私はその歌が載っている『古今和歌集』を詠んで、それを知ってからは、この素敵な女性に会ってみたい。そして、力を分けてもらいたいと思うようになった。


 その歌は

『さむしろに 衣かたしき 今宵もや 我をまつらん 宇治の橋姫』とあって、最初聞いた時。え、どういうこと。と思った、私には難しかったけれど『あなたを待ってる』と言う意味にとらえていた。


 だから、橋姫の伝説にあやかって、どうしても伝えたいことがあった。


 みんな、私が激推し。

 していた橋だから、どんな橋かと男子はワクワクしていたけど、普通の橋だったので、男子は散らばってしまった。女子仲間はみんな分かっていてくれたから、

『ガンバって。』といって二人だけ橋の上に残してくれた。


 不審に思ったのか、頭をきながら逢佐古君は『早くみんなのところに戻りませんか。』となんだかぎこちなく言って来た。

 ここだ!

 意を決して、何か言わなきゃと『ああ、あ、のの、』自分でも、心臓がのどから飛び出て、あたまがバクハツしそうで、目玉が高速回転でグルグルしているのが分かる。

 何を言っているのか自分でも訳が分からなくなった。

『ああノー?』

 と、逢佐古君。

 も―ダメ―と思った時、一瞬周りの風景が、平安貴族が行き交う、平安時代のそれに見えた。

 行き交う車は、牛車に、自転車で配達している人は、天秤棒で何か売り歩いている人、そして行き交う人は、そう平安時代のそれそのものだった。

 たくさん私の横を横切る人々の中に、ある平安貴族の女性が私にすれ違い際に『思ひ励め』(がんばれ)と言って、去っていった。

 え、橋姫?

 瞬間、周りは元通りとなって、眼の前に逢佐古君。

 私は橋姫に力を貰った気がした。


『どうしたの、桃田さん』と心配そうな、顔でたずねてきた。

 ギャーそんな目で見ないで―。


 と、もう一度、橋姫に貰った(と思う)力を借りて。

『あの、逢佐古君私ね・・・・。』

 

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