第九話 ある日の少年の昼下がり
穏やかな昼下がり。
太陽の光が降り注ぎ、少しばかりの風が吹いている。
草花は風によってそよぎ、木々は青々とした葉を揺らしている。
眠気を誘ってくるような暖かくて穏やかな、そんなある日―――
その日、ガイは暖気によって睡魔に襲われ意識が途切れかけていた。
「おい!見ろよ兄弟!川があるぞ!」
そこにいきなり叫び声が聞こえてきた。
この距離ならば叫ばなくても聞こえるだろうに。
声の主はゾア。数日前に出会い訳あって行動を共にしている飲んだくれだ。
「んん、叫ばなくても聞こえてるよ。川がどうしたって?」
「暖かくて眠くなって来てるし、冷たい川で遊んで目覚まそうって話よ」
「そんな時間は無い」
ガイはばっさりと切り捨てる。
ガイとキースは指名手配されている。遊んでいる暇など無いのだ。早く聖国を出なければ。
「そんな事言うなって兄弟、姉さんも良いだろ?少し位遊んでも」
ゾアはガイに言っても無駄だと思いキースへ頼む事にした。
「僕達には時間が無いのだけれどね。まぁたまには休息も必要だろうし良いよ遊んでも」
「キース!?」
「まじかよ!姉さん分かってるじゃねぇか!」
ゾアはそのまま服を脱ぎ捨て、下着1枚で川の方向へ走って行く。
「ガイも早く行くぞ!」
そう叫び声が聞こえた時にはもうガイからはゾアの姿は全く見えなくなっていた。
そしてガイはキースへ尋ねる。
「おい、キース本当に良いのか?」
「良いんじゃないかな、君も遊びたいだろう?」
「まぁ…っておい何してるんだ!」
ガイが突然叫ぶ。視線の先には服を脱ぎ捨て下着だけになっているキースが居る。
「何って濡れたら嫌だから服を脱いでるんだけど」
「キースは女なんだぞ、少しは恥じらいってものをだな…」
「独占欲…?」
「違うわッ」
「このまま早く脱いで川に行かないと僕は下着姿でゾアと二人っきりになるけど大丈夫かい?」
ガイは赤く染まりながら反射的に叫ぶ。
「それはダメだ!」
そう言ってガイもすぐに下着姿となって荷馬車から飛び降りキースへ手を伸ばす。
「行くぞ」
キースはその手を掴み軽やかに飛び降りる。
キースの手はしなやかで細くスベスベで冷たかった。
ガイはキースの手の感触を思い出しながら川へ向かって歩く。
「おーい兄弟と姉さん!遅いぞ!」
川へつくとまるで子供のようにはしゃいでいるゾアを見つけた。
年齢にそぐわず子供のようにはしゃいでいるおっさん…なんとも薄気味悪い事だ。
「てか、姉さんの格好…エr「お前それ以上言ったら、というか見たらぶち殺すぞ」
ガイが鋭い視線をゾアに向けて黙らせる。
しかし、突如冷たい感覚がガイを襲う。
そこへ視線を向けるとキースが手で川の水をしたから掬いガイへ思い切り掛けていた。
バシャ、そこへ追撃がかかる。
ゾアもキースに便乗してガイに水をかけていた。
「……………」
ガイが震える。
「おい〜寒かったか兄弟?すまんすまn…」
ガイの気迫にゾアが押し黙る。
ガイは震えながら声を出す。
「お前らぁ!!」
そう叫びながら大量に手で掬いゾアとキースめがけてぶっかける。
「これで仕返しだ!」
「やったなガイ!」
キースも仕返しでガイへ水を掛ける。
それから1.2時間ガイ達は童心に返ったかのようにはしゃいで水辺で遊び尽くした。
遊び疲れて岸で座っているガイ、キース、ゾア。
そこでゾアがある事に気付いた。
「そう言えばさ姉さん、その首筋の傷は何なんだ?」
キースの首筋、普段は服で隠れて見えなかったが今よく見ると何か小さな傷跡がある。
最初はガイも何なのか分からなかったが、ふとその正体に気付く。
ガイが血を吸った時の跡だ。
これがゾアにバレたら吸血種だということに気付かれて大変な事になる。
しかし、キースが答える前にゾアが続けて喋りだす。
「まぁ兄弟達がどんな奴らでも良いさ、今日も楽しかったしな」
そう言って立ち上がり荷馬車の方へ歩き始める。
「俺は先に荷馬車に戻っとくぜ」
「待ってくれ!話すよ俺達の事、良いよなキース?」
その背中にガイが声をかける。
「あぁ、僕はガイの事を信用しているしこの数日間僕も見ていたけど彼は信用に値する気がする」
ガイは手の拳を握り締め勇気を振り絞って告白した。
「実は俺達、吸血種なんだ」―――――――
少年は秘密を告白した。
これで少年に秘密は無い。
飲んだくれも秘密を明かす事で本当の意味で兄弟になれるのかもしれない。
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