第40話 未来に響く約束
夕暮れの雨がしとしとと降るある夜、スタジオの窓ガラスに映る街灯の光が、柔らかく揺れていた。国際フェスティバルを成功させた後、そして数々のプロジェクトを経て、芽衣と莉奈は、二人の音楽が新たな未来を紡ぐための準備を始めていた。
スタジオ内はいつになく静かで、二人は新作のデモテープに取り組む時間を共有していた。ピアノとヴァイオリンそれぞれのパートを確認しながら、芽衣が小さく口を開いた。
「莉奈、この曲……私たちのこれまでの歩み、そしてこれからの未来を全部込めたいと思うんだ。」 芽衣の声は少し震えていたが、その瞳には揺るぎない決意が宿っていた。
莉奈は静かに頷き、手に持つ譜面をそっと指でなぞる。 「私も同じ気持ち。あなたの奏でる音が、私の心と共鳴して……どんな壁も乗り越えていける、って信じてる。」
窓の外では、やわらかな雨音がリズムを刻む。二人はしばらくの間、楽譜と機材の向こうにある互いの笑顔と思い出を胸に、無言の時間を共有した。
ふと莉奈が視線を上げ、芽衣の横顔を見つめる。 「芽衣……私たち、これまで遠く離れて過ごす日々もあった。でも、音楽があるから、そしてあなたがいるから……もう、どんな未来も恐くない。」
芽衣は莉奈の手をそっと取り、温かな笑みで答えた。 「莉奈、あなたとなら、遠くにいても心はいつも一緒。私たちの音は、この先ずっと未来へ響き続けることを、私は信じてる。」
その瞬間、スタジオ内は二人だけの世界へと変わった。雨音のリズムと二人が奏でるメロディーが重なり合い、互いの鼓動がひとつになるかのような感覚が訪れる。 「これからも、ずっと一緒に歩んでいこう。」 芽衣が囁くと、莉奈も優しく答えた。 「もちろん。私たちの約束は未来に響く、永遠のメロディーだから。」
宵闇が深まる中、二人は新たな曲のブラッシュアップに励みながら、これから挑戦する次のプロジェクトや、実現したい夢について熱く語り合った。 「次は、地域だけでなく国際的にも私たちの音楽療法の輪を広げてみよう。あなたと一緒なら、どんな夢も形にできる気がする。」 「私も同じ。あなたの情熱があるから、私ももっと自分を信じられる。約束する、どんな時もこの絆を大切にし続けるって。」
やがて、スタジオの明かりが徐々に落ち、二人の作業は夜の静寂に溶け込んでいった。頬を伝う雨のしずく、遠くで聞こえる都会のざわめき――すべてが、これから歩む未来への希望と決意の一部となる。
翌朝、芽衣はスマートフォン越しに莉奈と短いメッセージを交わす。 「今朝も、新しいインスピレーションを感じた。あなたの笑顔を思い出して、どんな困難も乗り越えられる気がするよ。」 「私もよ、芽衣。あなたと共鳴することで、日々が輝いている。次に会える日が待ち遠しい。」
そのやりとりの一つひとつが、二人の心に確かな希望と、変わらぬ愛情を刻んでいく。 そして、新たなプロジェクトが始まろうとしている――二人が共に描く未来への約束が、今まさに形となり始めようとしていた。
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