老夫婦のマスターズ陸上ライフ

@evans3

第1話  早朝練習 2025年  その1

昨年(2024年)の12月から冬季練習を始めて2か月弱が過ぎた。

今年の冬季練習の柱は今までやったことのなかった朝5時からの早朝練習。

齢のせいか午前3時には目が覚めるので5時には準備万端だ。

マスターズ陸上を始めて17年、今まで重要性は分かっておりながらおろそかにしてきた下半身の強化がこの朝練の眼目だ。

自宅から歩いて20秒のところにある公園。

しゃがみ込みからのジャンプ、バウンディング(20段跳び)、ダッシュ、公園の立ち木に向かっての相撲のてっぽう等々を折りませての40分。

一年で最も寒いこの時期でも終わって自宅に帰るとシャワーを浴びなければならないほどの発汗だ。


一昨日は公園に霜が降りており、走る自分の足音がザクザクと鳴った。

霜を踏むその足音に半世紀以上前の小学校時代の、冬の朝の通学路を思い出した。

昨日は一面の雪で足音はサクサク。

一面の雪の上に自分の足跡だけが残っていく爽快さは、この時刻にやって来て公園を独占出来ている者だけの特権だ。

今朝は3度まで気温が下がり、土がコンクリートのようにカチカチになり、子供たちの自転車の轍の跡がそのままの形で凍り付いていた。

表土の氷の細片が公園の街頭の光を受けて無数の地上の星のようにきらめている光景は初めて目にした。


この凍えるような暗くて寒い朝5時の公園にやってくる酔狂な人はいないが、まれに例外がいる。

12月の末、ふたご座流星群が見られると報道された日の朝5時、公園のベンチに中学生と思われる少年二人が座り、まるでイースター島のモワイのようにじっと夜空を見上げていた。

私は二人の少年の貴重な静寂の時を乱したくなかったので、その場を離れ30分程あたりを歩いてから公園に引き返してみると二人の姿はベンチになかった。

二人はふたご座流星群を見ることが出来ただろうか。

「流れ星を一緒に見よう」と約束して、早起きして寒さに耐えながら空を見上げていた少年二人は、今朝のことをずっと覚えているだろうなあと思いながら、私もしばらく暗闇にたたずんで夜空を見上げた。


私がひそかに「ネオン犬」と命名しているラプラドルレトリバーも老婦人に連れられて公園に時々やってくる。

「ネオン犬」の由来は赤と青のピカピカ光る胴輪をつけているからだ。

闇の中での散歩に目立つようにそうしているのだろうが、その人目を引かずにはおかないど派手な姿はエルビス・プレスリーを連想させ、あれでは犬だって恥ずかしいのではなかろうかと同情させられる。




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