第3話 それぞれの試練

 カイトはもやもやした気持ちを抱えつつ、2時間の見張りを終えた。次に見張りに立ったのは、シモン。寝ていたら腰が痛くなったのだろう、腰を伸ばし伸ばししながらカイトと交代する。シモンは満天の星を見上げた。星空の雄大さを感じていると、逆にちっぽけな自分が浮かび上がってくる。

「私はなんてダメな人間なのだろう」

 シモンの魔法はまだまだ弱く、例えば弱っちいスライムが数匹まとめて出現したとする。そういうのが相手なら魔法で一掃できる。ところが、昼間のようなサイクロプスのように強大な敵相手だと、まだまだ火力が足りない。僧侶・マリアの魔法力は回復のためにできるだけ残しておきたい。攻撃魔法特化型の自分がもっと戦闘で活躍しなければならない。そうなれなければ、防御力が極端に弱い自分は、このパーティの足手まといだ。そうはなりたくない。2年前。

「魔王を倒す」

 途方もない夢を抱いて4人で故郷を旅立った。誰も期待していなかった。その証拠に王様は金50しかくれなかった。たったそれっぼっちのお金を渡して、

「魔王を倒して参れ」

 と、真顔で言っていた。金50何て今どき、子供のお小遣いにもならない。それしかお金をくれないから、私たちはその辺に落ちていた木の棒や、お鍋のふたで武装した。

 まるで町で嫌われ者の、いたずら好きのグループと見た目は何も変わらなかった。

 それでもプライドはあったのだ。

「魔王を倒す」

 それは私たち勇者パーティにしかできないことだ。

 それが今、このパーティから自分は落ちこぼれているような気がした。もっと強くなろう。それにはまずイメージを上手に描かなければならない。イメージを具現化するのが魔法だから。想像。こういう攻撃がしたいと想う。例えば昼間のサイクロプスを一瞬で焼き尽くす、業火をイメ―ジして、それを炎の聖霊と共有する。それができればもっと自分は強くなれる。落ちこぼれたくないシモンは、見張りに立ちながら、2時間。イメージトレーニングに励んだのだった。

 シモンの次に見張りに立ったのはマリアだった。マリアはシモンに叩き起こされると、口がへの字になった。まだ4時間しか寝てないのに起こされた。誰だって不機嫌になるのは仕方ない。

 マリアは「虎の子」にしている「野いちごミルク」のキャンディをひと粒取り出してなめた。芳醇なミルクの香りがお口いっぱいに広がり、その後からいちごの甘酸っぱさが追いかけてくる。素晴らしいハーモニーにちょっとした幸福感を感じる。

 食べることが大好きなマリアは美味しいものが大好き。どんなに不愉快な時でも、野いちごミルクのキャンディーをなめれば、途端に気持ちが楽になる。

「もっと持ってくればよかったな」

 いくら馬車を手に入れたからと言って、無限に荷物を持ち歩けるわけではない。ひとりにつきトランク2個。それが許された荷物の範囲。

「キャンディー10袋詰め込んだけど、全然足りないや」

 マリアはちょっと心細くなっていた。そしてザイージョの町に着いたら、携行できる美味しいものを一番先に探そうと思った。もし見つからなかったら、私はもう無理かもしれない。マリアは本気で悩んでいた。

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