気ままにショートショート!

さくらあめ

目覚まし時計

 ジリリリリ、ジリリリリ。

 僕の大好きな、ミリタリー系のアニメのBGMが、けたたましく鳴り響き、新たな一日の始まりを告げる。

 「もう起きる時間か」

 手探りでスマホを探す。頭までかぶった布団を、ゆっくりと、ずらしながら。

 ジリリリリ、ジリッ。

 「今日も、ありがとう」

 そっとスマホに、手を伸ばして、目覚ましを止める。頭を下げて感謝を示しながら。

 「よしっ、今日も起きれた」

 伸びをして、新たな空気を取り込みながら、先日の失敗を、思い起こす。


 話は1週間前までに遡る。先週は社会人になって一番、責任の重い仕事を任せられた。

 どれくらい責任が重いかというと、私の仕事をもとに、チームメンバーが仕事をする事になるくらい、重い。

 「入社して3か月なのに、どうして私に振られたんだ。まあでも、いい経験か」

 難しいと感じたけど、ワクワクしていた。業務外の時間でもどんな風に取り組もうか考えるくらいには、ワクワクしていた。

 蓋を開けてみると、任された仕事は、想像よりも責任が重く、難しいものだった。なんったて、プロジェクトの中心となる部分だったからだ。チームメンバーに関わるどころの話ではない。

 「いい経験になるとは思ったものの、これは難しい。何から始めたらいいんだろう。もらった資料にはろくなことが書いてないし、昨日言われたことが次の日にはひっくり返るし。本当にめちゃくちゃだ」

 渡された資料を眺めながら、一人愚痴をこぼす。

 こんな重要なものにもかかわらず、人手不足で、新人が担当するしかない。かなりギリギリな仕事だ。

 「愚痴ったって、仕方ない。頑張るか」

 大好きなコーヒーを一口飲み、キーボードを叩き始めた。


 いろんな人の手を借りながら、数日かけて、何とかやり遂げることが、できた。

 1日に3回も、打ち合わせが入る時があり、たくさんの人と会話をした。難しい説明をたくさん受け、頭を抱えてばかりの一週間だった。

 「やっと終った。本当に疲れた。もう資料を見たくない」

 やり遂げられたものの、普段の何倍も、疲れた。お風呂やご飯を後回しにして、ベットに倒れ込むほどに疲れた。

 少し横になってから、何とか体を起こし、食事と家事を済ませて、寝ることにした。

 寝るときにはいつも、目覚まし時計が、セットされているか、入念に確認している。その日ももちろん、確認を怠らなかった。

 「今日はいつもより疲れてるから、多めにセットしておこうか」

 布団を被るとすぐに眠りにつき、夢を見ることもなくぐっすりだった。


 ジリリリリ、ジリリリリ。

 次の日も、いつものように目覚ましが鳴る。もちろん、ミリタリー系のBGMだ。

 「まだ7時か。昨日の疲れがまだ残ってるな~、頭がズキズキする。今日はテレワークで10時開始だし、8時まで寝よう」

 もう一度目覚ましをセットして、あとの自分に任せて、二度寝してしまった。

 

 プルルルル、プルルルル。

 また音がなったので、目を覚ました。しかし、違和感を感じた。いつもの音とは違うからだ。通話がかかってきた時の音だった。

 恐る恐る、スマホの画面を見てみると、10時を過ぎていて、相手は会社の上司だった。冷汗が止まらなかった。目も覚めて、一度深呼吸をして、電話に出た。

 寝起きのがらがらの声で、上司からの電話に出る。

 「もしもし…おはようございます…」

 「あ、もしもし?おはよう!体調とか大丈夫?電話がつながらなかったから、心配したよ」

 「はい…大丈夫です…」

 上司の様子を伺いながら、静かに答えていく。上司の次の発言を待ちながら、ゴクリと唾を飲み込む

 「寝坊だね?」

 「はい…申し訳ありません…」

 「寝坊ならいいの、いや、良くないけど。何かあったんじゃないかと思って、君の家に向かうところだったんだから!」

 「本当にすみません」

 「繰り返さなきゃ大丈夫だから!じゃ、準備できたら業務に入ってね。今日も頑張ろう!」

 本当にいい会社に入れたと、思った。

 

 あの日を境に、二度寝には、かなり神経質になった。特に平日は。

 目覚ましの間隔を、6時から9時まで30分おきに、設定するようになった。

 あんなにも、煩わしく感じていた、目覚ましの音に、感謝することになるとは。

 あの日以来、寝坊はおろか、二度寝もしなくなった。

 本当に感謝しかない。毎日、休みなく起こしてくれる、目覚まし時計には。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る