第22話
夏休みに入っても北高校サッカー部に特段の変わりは無かった。合宿を行う訳でもなくただ日々の練習量が増えただけ。最初こそインターハイ出場に浮足立っていたもののそれにも慣れると結局日々変わらない過ごし方になる。
それでもただ練習場の外は別で、それは地理的な意味でも衆目に晒されると言う文脈でも当てはまることだった。
「暑くないのかなぁ」
と吹奏楽部所属の
それと言うのも勿論のこと、北高校サッカー部のインターハイ出場である。幼馴染みの
それでも結局は各自が電車で運ぶことになるのでは? と聞くと、
「何でもバスが出るらしいよ」
と部長が答えてくれた。
となると別段演奏することは好きなので後の問題は炎天下の中スタンドで日光を浴びながら突っ立って吹かなきゃいけないことぐらいだ。そしてこれこそが最大の問題である。
本番を想定して立ったまま行う練習の中、悶々と当日のことを考えてふと漏れたのがさっきの感想だ。
窓の外では、冷房の効いた教室内でも窓際だと汗をかきそうな日差しの中練習しているサッカー部に幼馴染みの姿が混じっていた。春先の体力測定でも汗一つ掻かずに「そろそろオーバーワークになっちゃうかな」と言ってシャトルランを切り上げたクールでかっこいい幼馴染みも、さすがに汗を掻いていた。
サッカー部が出場するインターハイの開催は五日後に迫っている。だからなのか練習は実戦形式のようだった。
幼馴染みは三年の騎院先輩と並んでグラウンドの中央付近でプレーしていた。記憶に間違いが無ければ、前にそこでプレーしていたのは――
「背負いこみすぎないでね」
どうしてだか、図書室で会った姿が重なる。
だから聞こえるはずはなくそんなことを聞いたら余計に頑張りすぎる彼女にせめてもと祈りを込めた。
✕ ✕ ✕
音楽室からこちらを覗く小さな人影があることに優狩は気が付いていた。十中八九幼馴染みの来未だろう。
「予選の決勝じゃそう言う話が出ないところが何ともうちらしいよね」
グラウンドでリフティングをしていると試合形式の練習の後、黙々とボールを蹴っていた
「かもね。でも夢君が一声掛ければファンの子たちがやってくれたんじゃない?」
「んーいや、たぶん彼女が嫌がるから無しかな……」
名案かと思いきや苦い表情を別華は浮かべる。それに舌をペロって出して残念と答えた。
「すっかり忘れてたよ。まぁとかく吹奏楽部のみんなには感謝だね。決勝まで頑張って貰お♬」
「それが一番のお礼になるかな。ああでも何か差し入れぐらいはするべきか」
「それなら私から未来に渡しておくよ。何がいいかな」
「この暑さじゃアイスなんか喜ばれそうだけど」
「喜多町商店までの復路で溶けちゃいそう?」
「そこは頼安にでも一っ走りお願いだな」
「呼んだか?」
いつの間にやら後ろにいた北高校サッカー部副キャプテンの
「相変わらずタイミングがいい男だな」
「丁度買い物のお願いをしようかって話してたところだよ」
「買い物?」
「吹奏楽部の差し入れにアイスを持ってこうかってね。ただ喜多町商店まで行くとなると帰りに溶けるだろ? そこで頼安に走って貰おうかってね」
「それはまぁ問題ないがどんぐらいいるんだ?」
「部員が30人って聞いてるから袋入りの棒アイスとかが良いかも?」
「了解した。……クーラーボックスでもあれば苦労しないんだがな」
「後で監督に相談してみるよ」
「よろしく頼むぜ。じゃあちょっくら行ってくるか」
「行ってらっしゃい♬」
頼安の足ならば30分も掛からないだろう。
段々と小さくなるもじゃもじゃ頭を見送ってからそれぞれの練習を再開した。
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