第7話 NTRれた彼女のデート姿を目撃
「あぁ~。楽しかったね~」
紬は満足そうにカラオケ店を退出する。
花道達4人も紬と一緒に行動する。あの後3時間ほど5人は歌い続けた。結果として大いに盛り上がった。
「また行きたいね! 」
紬が期待するような瞳で花道達に視線を向ける。
「そうだな」
「今日は楽しかったよ」
「本当に」
「こういうのも悪くないね」
花道達は各々抱いた感想は違えど、好意的な印象を与える。
「良かった。私も、すごい楽しかったから。こんなに笑ったの初めてかも」
紬は花道達の感想を耳にし、嬉しそうに頬を緩める。その表情から紬の満足度が伝わる。
「それは良かった。ってあれ、同じクラスの山口じゃねぇか? 」
脇田が目を細める。
「本当だ。それと山崎も一緒じゃないか」
藤井が山口と手を繋ぐ女子の正体も把握する。
山口と山崎はラブラブな雰囲気で互いに身体を密着させる。完全に2人だけの世界が完成している。
一方、花道は無言を貫く。
「「「あっ」」」
脇田、藤井、安井が花道の心境を察する。
「す、すまん森田」
「デリカシーなかったわ」
「ちょっと違うところに行くか? 」
脇田達は申し訳なさそうに花道に配慮する。
「…森田君」
紬も心配そうに花道を見つめる。
「…」
花道は無言で山口と山崎の方へ向かう。
脇田、藤井、安井、紬は静かに花道の動きを目で追う。まるで顔色を窺うように。
「ちょっといいかな」
花道は静かに山口と山崎に接触する。
「あん? 」
恋人との時間を邪魔されたことに腹が立ったのか。山口は不機嫌そうに花道の声に反応する。遅れて山崎も山口に倣う。
「お2人共ラブラブな雰囲気だけど。これからラブホでも行く予定かな~? 」
花道は先ほどの様子と打って変わり、明るい声で予想外の言葉を掛ける。
「「「ぶほぉ~〜!? 」」」
脇田、藤井、安井が勢い良く噴き出す。完全に笑いに嵌まった。各々が笑い声を押し殺すように小刻みに震える。
「お、おい! バカ!! 何を言ってる!! 」
山口は慌てて花道を注意する。山口は恥ずかしそうに頬を真っ赤に染める。
「あれ~。あまりにラブラブだからラブホに直行かと!! 」
「や、やめろ! こ、声が大きい!! 」
山口は周囲を気に掛ける。花道の声のトーンが大きいせいで周囲の人間たちが何事かと訝しむ。
「あれ~。もしかして山口君と山崎さん? 偶然だな~」
脇田が便乗して山口と山崎の前で登場する。
「確かに、ここら辺の近くにラブホ街あるからね」
「前にもラブホ街で2人を見たって友達に聞いたし」
藤井と安井が援護するように追い打ちを掛ける情報を周囲に流す。
「なになに? 」
「ラブホだって~。はしたないよね~」
「TPOくらい弁えろよな」
周囲から不満の声がチラホラ生まれる。
奇妙な物を見る視線が山口と山崎を中心に集まる。
「くっ!? い、行くぞ!! 」
山口は強引に山崎の手を引き走り出す。
「キャ!? ちょっ!? いきなり!? 」
山崎は抵抗できずに人形のように引っ張られる。
山口は周囲の視線に耐えられずに逃げ出した。
一方、花道達は特に気にした顔を見せず、堂々と腕を組んでいた。まるで戦隊のように。
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