第3話 球技大会の練習

「よっしゃ! 1週間後の球技大会のために練習試合するぞ! 」


 体育の時間。校内のグラウンドで球技大会のために自由な時間が設けられた。


 クラスでもカーストの高い山口が仕切る。


 チームは事前に分けられている。山口をリーダーとした陽キャチームと花道達を含む陰キャチームの2つに大別される。


「早速やるぞ! まぁ、彼女NTRれる奴の居るチームには絶対に負けねぇけどな! 」


 バレーに自信があるのか。山口は負ける気は更々に無さそうだ。


「早速、始めるぞ~! 」


 当たり前のようにサービス権は山口の率いる陽キャチームにある。


「オラ! 」


 山口は慣れた動きで鋭いスパイクを放つ。


 山口のスパイクは狙ったように花道に接近する。


「おっ。…よっと」


 しかし、花道は期待を裏切るように軽々と山口のスパイクをレシーブする。


「…は? 」


 予想外の光景に山口の口から間抜けな声が漏れる。


「脇田~。適当にトス上げてくれ~」


 花道はボールの落下地点に立つ脇田に呼び掛ける。


「オ、オッケー」


 脇田は、ぎこちない動きでボールの落下地点まで移動すると、花道を対象にトスを上げる。


「セパタクロー! 」


 花道は脇田からの高いトスに合わせるように、空中に高く舞ってバレーボールをオーバーヘッドキックする。


「「「ぶほぉ~〜」」」


 脇田、藤井、安井は花道の奇行に噴き出す。


「な!? 」


 花道の蹴り上げたバレーボールは剛速球で山口に接近する。


「がっ !? 」


 花道の剛速球は無慈悲に山口の顔を襲う。残念ながら山口は全く反応できなかった。山口は無様に吹き飛ばされ、グラウンドに寝転がった状態になる。


「いってぇ~」


 山口は痛みを和らげるように顔を両手で押さえながら呻き声を上げる。


「「「だ、大丈夫!? 」」」


 普段から山口と仲の良い友人4人が慌てて駆け寄る。山口は、すぐに立ち上がれない。


「俺、すごくね? 」


 花道は脇田、藤井、安井に共感を求める。少し自慢も含んだ口調であった。


「ああっ。…確かに…凄かった。…それよりも。ぶほっ」


 脇田は花道を称賛しつつ、両手で笑い声を必死に抑える。藤井、安井も同様である。3人共が山口をチラ見してはツボっている。


「そんなにウケるとは…」


 花道は予想外の反応に少し引いている。ここまで好意的な反応が得られるとは思っていなかった。


「あははっ!! あの人おもしろい~」


 男子の試合を観戦していて山口の心配をする女子が居る中、1人の女子が思わずといった形で大笑いする。


「いや~。前から思ってたけど。改めて嵌っちゃったかも♪」


 女子は楽しく嬉しそうに花道に好意的な視線を送る。


 この女子は意外にもクラス1の美少女の三上紬であった。


 黒髪のロングヘアに茶色の瞳、純白な肌が特徴的であり、クラスでも圧倒的に目立つ存在である。そんな女子が花道に興味津々である。


「どぉぉりゃ~〜」


 一方、そんな花道は紬の視線など全く気づいておらず、試合が再開してから強烈なサーブを相手コートにお見舞いしていた。


 狙いは山口である。またもや山口をバレーボールで吹き飛ばしていた。

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