卒業

「はぁぁぁーーー」

クソデカため息を吐く俺。それもこれも理由がある。

 

「やっと卒業だよ…………」

 

周りを見回しても笑顔で溢れている。こんな中不貞腐れたような顔しているのは俺だけだろう。周りは記念写真を撮る者や卒業パーティーの予定を話してる者ばかりである。さっさと帰ろう。

帰って受験中溜めてたゲームや漫画を消化しよう。

誰1人帰る様子のない中ただ1人校舎に

背を向け校門に向かう。

その時、背後から聞き覚えのある声がした


「待って、はー君。もう帰っちゃうの?」


返事はせず、校門へ足を進める


「待ってってば。話したいことあるから聞いて欲しいの」


 周りの視線が俺に刺さる


『あいつ誰だよ。高梨さん無視するなんてよくできるな』

『例の人らしいよ。高梨さんのストーカーって噂の』

『あいつか。木野と高梨さんの仲引き裂いた奴は』


好き勝手喋る声が聞こえてくる


何がストーカーだよ。

やっぱりあいつに関わるとろくなことがない。

だがこんなところで好き勝手言われるのも腹が立つ


「はぁ、分かったよ。ここじゃ周りがうるさいから別の場所に行こうぜ。」

「分かった」


今度は校門に背を向け、校舎内に向かう。

おそらく、俺は今から高梨 綾香たかなしあやかに告白をされる。願望ではない。確信めいた予感だ


「屋上でいいか?誰もいないし」

「うん」

 

階段を昇る

 

「着いたぞ」

 

一呼吸おく

 

「で、話って何?」

 

綾香と目が合う。

綾香はぱっちりとした目で見つめてくる


「あのね、色々話したいことがあるからまとまってないかもしれないけど話すね。はー君は幼稚園の頃から仲良くしてもらっ………………


綾香の話が頭に入ってこない。一生懸命口を動かしてる綾香を見ると、改めてこいつが美人なことが分かる。加えて頭脳明晰、明るくてクラスの中心、終いには社長令嬢とである。そんな奴が俺のこと好きなんてありえるか?都合の良いラノベでしかあり得ないぞ。

 

どうでも良いことを考えていたが、

綾香の言葉で現実に引き戻される


…………ずっと小さい頃から一緒だった、はー君のことが好きです。


途中話さなくなった時期もあったけど、また仲良くなれて嬉しかった。高校は別々で遠距離になるけど私たちなら乗り越えられると思うの。」


綾香が一呼吸おく


「だから、付き合ってください」

 

ほらね。やっぱり告白だよ

 

今にも泣き出しそうな顔で綾香は俺を見る。こいつの正直な気持ちにちゃんと俺も応えないとな。

それが礼儀であり決別だ。


「だが断る」


 静寂が広がる


「えっ」

「聞こえなかったか?お前の告白は断る」

 涙を浮かべながら綾香はじっと見てくる

「理由聞いてもいい?」


 キタキタキタ。

やっと…………やっと言える時が来た。


「ずっと嫌いだったんだよ。小さい頃からお前のせいで俺は嫌な思いしかしていない。そんなお前を好きなるわけがないだろ。」


 泣き崩れる綾香。


「どうせ断られることなんて無いと思ってただろ?可愛い私の告白を断るはずが無いって考えが見えて気持ち悪いんだよ」

「そんなことないよ、、、そんなことないもん」

「どうだか」

 

 泣きじゃくる綾香を尻目に屋上を後にする


言ってやってぜ。

長年思ってることをやっと言えた。

さっさと帰ろう。こいつに関わることなんて

一生ないと思うと、足取りも軽くなる。

 

校舎に入るドアを開けると、

綾香の親友である山下舞がいた。

見ればわかる。とても怒っている

明らかに俺のことを睨んでいる


 


「あんたことは一生許さない」


怒気が感じられる言葉だ。しかし、どうでもいい


「勝手にどーぞ」


言ってやった。言ってやったぞ。俺は。これからの人生で高梨綾香と関わることは無い。人生の第二章が始まる

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