キミと走る明日を -ゴースト・イン・ザ・メモリー-

じゃがマヨ

届かない声

第1話


 携帯のバイブ音が静かな部屋に響いた。

 机に伏せていた頭を上げ、逢沢タクトはぼんやりとスマートフォンを手に取る。


 画面には、新着メールの通知。


 送り主の欄は**「不明」**。

 本文には、ただ一言——


 「私を助けて」


 タクトは眉をひそめた。


 (……なんだ、これ?)


 いたずらメールか、それともスパムか。

 だが、本文のあまりの短さと、どこか切迫した響きに、彼の指はすぐに返信ボタンへと向かった。


 「誰?」


 送信——エラー。

 再送——エラー。


 「……は?」


 不審に思い、メールアドレスを確認しようとしたが、そこには何の情報もなかった。

 差出人のアドレスはおろか、ドメインすら表示されていない。


 タクトは首をかしげながらスマホを置いた。

 深く考えても仕方がない。寝不足のせいで、頭が働かないのだろう。


 ——しかし、それは始まりに過ぎなかった。


 翌日も、翌々日も、**「私を助けて」**という同じメールが、何度も何度も彼の元に届いたのだった。

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