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@Alpha_Centauri_A

Ep1 PROLOGUE

人生で始めて「死にたい」と思った。恋人に裏切られ、1億2千万人を死なせる元凶を作り、この世に、そして人間に絶望していた。しかし、まだ死ぬわけにはいかない。できる限りの落とし前は付ける。


 よくよく考えれば簡単なことだ。僕のことを殺したいほど憎んでいる人間なんて、世界中にごまんといる。そんななか僕は自殺を装い、殺された。


 気づいたときにはニューヨーク地下鉄の列車に轢き潰されていた。今まで生命の意識が死んだら無に帰ると思っていたが、それは違うようだ。僕は、白い光の中を漂うように眠っていた。


「えーっと、藤沢さん、かな?」


 全身が白く光っている女性が目の前に浮かんでいる。


「え?」


 意識を完全に起こすために、頭を振って左右を見渡した。


「な、何なんだここぉぉぉぉぉぉぉお!!」




 * * *




 その白い女性は事情を話し始めた。


「ここは・・・まあ、神界かな?天国という人もいるけど」


 ん?天国?


「私は創生の女神ブラフマー。君たちで言うところの異世界を管理したりしてるんだけど・・・その異世界で、ちょっとした事件があってね」


「まって!話が全くわからないんですが」


「私達女神は宇宙に宿った概念から生まれるものなんだけど、破壊の女神の最高眷属が突然力を乱用し始めちゃったの」


「それが、僕とどんな関係に?」


「最高眷属って、女神と同じ力を持ってるの。破壊の力が強すぎて、私達も手がつけられなくて・・・。それをなんとかできるのは創造の女神である私だけなんだけど、私も力を使いこなせてないのね。


 私の最高眷属は創造神ブラフマーっていう固有魔法が使えるんだけど、これがひと癖あって。何でも作れるっていう術式なんだけど、魔法の術式にしろ物質にしろ、構造を・・・分子構造や魔力の動きを完全に理解できないと作れないの。そんなの無理だから、異世界とあなたの世界を含めて最高の頭脳であるあなたを呼んだってわけ」


 そんな事があったのか。


「でも神様なら何でも知ってるんじゃないんですか?」


「私達は概念から生まれるの。宇宙を作ったのは私だけど、全部知ってるわけじゃない。それにあなたはあそこで死ぬ予定だったから、異世界に来ても問題ないでしょ。それに、外見も黒髪サラサラのイケメンにしといてあげるから」


「でも僕前の方の世界のがいいんですが。まだやりたいことがあるし」


 女神様は少し考えた。


「じゃあ、破壊の最高眷属を倒せたら元の世界であなたがその『罪』を帳消しにできるタイミングに戻してあげる。状況はそれだけきついの」


 押しに弱い男、僕である。それに今からでも罪滅ぼしをできるなら何だってやる。


「・・・いいですけど」




 * * *




 ふと気づくと目が開いていた。そこには豪華な白い天井と二人の男女の声。


「早く逃げないと___」


「無理だ___守る___」


 すると、白い天井が端から黒く焦げていっているのがわかった。炎もちらついている。そこからはしばらく目を閉じ、眠っていた。


「____あなただけでも___」


「ごめんね____さよなら____またいつか_____」


 最後に女性の声が聞こえ、そこで記憶が途絶えた。




 * * *




 あれから15年が過ぎた。この世界に生まれた僕は、直後の記憶を除いて物心がつくまでのすべての記憶はない。だが、前世の記憶は保っている。前世の僕は科学者だった。日本人で、名前は藤沢八雲ふじさわやくも。カリフォルニア大学を15歳で卒業し、17歳で物理学の博士号を取った。


 しかし、この世界ではイスラフェル・フォン・ダブリスという名前をつけられた。父親であるケルビム・フォン・ダブリス男爵は貴族とは名ばかりの普通の家だが、その管理下のアスターテ王国東部はのどかなので別荘地として人気がある。もちろん様々な国の要人が来たりするので、あらゆる国の言語を覚えさせられた。しかし、次男で後継ぎではないということもあって幼少期は楽に過ごせた。


 父さんはわりかし自由でおおらかな人だったので、僕を自然の中で育ててきた。そのせいで何度か危ない目にもあったのだが、ここまで死なずに生きてきた。しかし、父から魔法の使い方を学んだことで、僕の生き方が変わった。


 以下は、父さんの魔法講義である。


「この世界では、誰でも魔法を使うことができる。頭の中に使いたい魔法を思い浮かべて、それを脳幹に集中させると、そのイメージが手のひらを通して魔力に変換されてイメージが世界にアップロードされる。」


 おそらくこの世界ではあらゆる物質が自在に性質を変える元素1種類のみで構成されている。自分の体内で脳波を使って物質を何にでも干渉できる状態にし(多分これが魔力だ)、それを手のひらの神経などから放出するのが魔法だという結論にたどり着いた。この結論にたどり着くまで一ヶ月山にこもった。元の世界では原子は陽子や中性子、電子などに分けられるが、この世界では原子を分解すると魔力の”元素”になる。なので、僕の原子や分子、物理学の知識がそのまま魔法に転用できるというわけだ。


 手始めに僕は水を創り出すことにした。まず空気中の酸素と水素を集め、水素原子を2つ酸素原子に結合するイメージを作った。成功だ。手のひらの上に、ひとかたまりの水玉が乗っかっている。


 それ以外にも、創造神ブラフマーを使えば様々なものを作り出すこともできるようだ。これは、研究者として研究して見る価値がありそうだな。


 




 そんなこんなで色々遊んでいると、父さんが声をかけてきた。


「おい、イズ!」


 イズは、この世界でのイスラフェルの愛称だ。


「魔法学校に行ってみないか?どうもおまえ、水を操ったり妙にスジがいいらしいな」


 物陰から覗かれていたらしい。


「うん。行ってみたい」


 とりあえず学歴は大事なので、2つ返事で魔法学校に通うことにした。




 翌日。


 入学試験は、簡単なものだった。筆記試験、それと遠隔攻撃魔法を20メートルほど離れた的5つに5分以内に当てる。たったそれだけ。楽勝だと思ったが、世間的に見れば子供には厳しいらしい。


「杖などの法具の使用は禁止。魔力切れは失格。使用する魔法はどんなものでもいいが、試験官や他の受験生に危害を加えたら失格。以上です。試験番号順に始めなさい」


 かなりの老齢と思われる魔女が試験官だ。


 僕の番号は150。これでも前の方で、魔法学校の人気さを伺わせる。見てみると、かなりの人が最も扱いやすい「魔力光弾ブリッツ」という基本魔法を使っていた。僕も父から教わったが、魔力の塊をぶつける簡単な魔法である。


「それじゃつまんないよな・・・」


僕はそう呟いた。


「試験番号150番!」


 僕の番号が呼ばれた。派手に行こうと思ったので、僕が過去に一度使ってあっさり裏山にクレーターを作ってしまった科学を使うことにした。もちろん防御用の結界付きだ。


 構築する物質の化学式はC3H5N3O9。大きな衝撃が加わると黒色火薬の7倍の威力で爆発する危険な物質である。僕はそれを手のひらに展開した魔方陣の上で小指の大きさほど作り出し、真ん中の的に向けて発射した。結界もあるので、他の人に危害が及ぶこともない。


 着弾した瞬間、的どころか建物の大部分をも吹き飛ばす大爆発が起きた。


「こりゃ、結界張ってなかったら危なかったな・・・」


僕はそう呟いた。


「今、何をしたの・・・?」


試験管の魔女が震えながらそう呟いている。


「…ニトログリセリン。つまり、ダイナマイトだよ」

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