第13話 黒髪巨乳生徒会長とマジメデート

「今週の日曜日、空いてる?」


 生徒会室の掃除をしているときだった。デスクに座って書類仕事をしていた紫乃が、不意に聞いてきた。


「空いている」

「ならデートしましょう。駅前に十時。いい?」

「OK」


 平静を装った短い会話だったが、俺は「きた!」っと心の中でガッツポーズをしていた。


 ちょうどムラムラというか性欲が高まってきたタイミングで、あの胸をまた楽しめると思うと、ドキドキワクワクが止まらなくなる。


 ストレス発散の為のカラダだけの関係で、仮に紫乃側には一切の恋情がなかったとしても、断る理由は何もない。


「じゃあ今週末は空けておいて」


 紫乃はそう言って、今日は用事があるからと一人で帰っていき……。俺は日曜が楽しみで、それまでの五日間は夜の日課になっている「おつとめ」を我慢して、さあいざと週末を迎えたのだった。



 ◇◇◇◇◇◇



 日曜日当日。俺も、ジャケットにスラックスと格好をつけたのだが、白のフレアワンピースで現れた紫乃。しゃべらなければ、猫を被っていれば、高貴さすら漂わせている美少女だ。周囲の目が自然と集まってしまう。


 俺はその紫乃と連れ立って歩けること。そしてさらに周りは想像すらしていないだろうが、この美少女とはカラダの関係で、これから一発とは言わず何発もヤるのだということに優越感さえ感じ、一緒に中央駅の改札をくぐる。


 自然とワクワクムラムラが高まり、我慢するのもだんだんつらくなってきた俺を導くように紫乃は多目的トイレまで歩いていき、その扉に手をかけ……って、多目的トイレ!


 俺はびっくりして声を出してしまった。紫乃が不思議だという様子で俺を見る。


「え? なに?」

「いきなり多目的トイレでとか……。なんというか背徳的だな」

「なんのこと? 女子トイレが満員だから仕方ないかなって」

「……え?」

「まってて。すく済ますから」


 紫乃はただそう告げて中に入っていき。数分後には出てきて、「おまたせ。行きましょう。一駅だから」とすたすた歩いていってしまったのだった。


 ……え? すごく……期待した……んだが……。


 お預けを食らった犬のような気持ちで、しかたなく俺も紫乃に続いてエスカレーターに乗る。一駅の乗って、隣のあざみ駅にまで来たのだった。



 ◇◇◇◇◇◇



「ここよ。デート場所」


 紫乃が連れてきたのは、港北区中央図書館だった。中に入ってテーブルに着き、紫乃はカバンから教科書とノートを取り出し勉強を始めたのだった。


「本、いっぱいあるから、読んでて。退屈はしないはずよ」

「え?」

「私、日曜はここで勉強するのが日課なの」

「ええと……。セッ……じゃなくて、デートは?」

「今してるじゃない? 付き合ってくれてるから、昼食くらいはおごるわよ」


 そこまで話してから、紫乃は用事はすんだとばかりに目をノートに戻し、俺にかまうことはなくなってしまったのだった。


 俺は、教科書に集中している様子の紫乃に、おそるおそる聞いてみる。


「ええと……」

「なに?」

「ストレスとかは?」

「今はないわね」

「ないの?」

「ないわね」


 短い会話が終わって、声だけを俺に向けてきていた紫乃は、また無言に戻る。


 そのまま一時間が経って、さすがに我慢しきれなくなり、再度紫乃にアタックする。


「俺……五日我慢して……」

「なんのこと?」

「ええと。生理的欲求が……」

「そうなの? 大変ね」

「…………」


 俺はその紫乃の反応に、期待と欲望で膨らんでいた胸がシュンとなってしまった。そのまま、紫乃の魅力的な姿と胸を前にして夕方まで付き合った挙句、図書館前でお開きになったのだった。


「じゃあ、明日はまた学園で。今日は付き合ってくれてありがとう。おかげではかどったわ」

「俺の方は別の意味で……夜は、はかどりそうだけどな」

「ひとりエッチ、がんばって」

「わかってたのかよ! なら!」

「今日はそういう気分じゃないの。気分じゃないときにするのは楽しくないでしょ。ペース的にはたぶん来週にはそういう気分になるから、そのときのご奉仕で許して」


 と、紫乃は俺の頬にチュッと軽くキスをして去って行ってしまったのだった。


「キスとか逆効果だろ!!!!!! よけいにムラムラが収まらなくなったぞ!!!!!!」


 感情をぶちまけたが、いなくなった紫乃には届かない。そのあと、ダッシュで家に帰って、妄想の中で紫乃を前から後ろから上から下からよがり狂わせて○しつくしてやった! ざまあみろ!


 ――と、ひとり致した後で吠えたが、さすがに虚無感に襲われた。翌週のホテルデートのときにその妄想を実行に移したのだが、紫乃は満足しきって幸せの中という顔をしていた。やっぱり勝ったのは紫乃なんじゃないのかと、しばらくは負けたような気分からは抜け出せない俺なのであった。

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