第16話 にんじんしりしりを作ろう!

「沖縄風にんじんしりしり!」


「栗さん! にんじん大袋、二割引きだから買ってきちゃった! いいレシピ教えて!」


 いつもの


「にんじん。なら、今日は炒めものにしようか」

「炒めもの?」

「沖縄料理のにんじんしりしり。簡単で美味しいよ」


 玲奈はスマホの画面を見せる。料理サイトの沖縄レシピ特集だ。


「これ、テレビで見たことあるかも?」

「そうそう。たまにテレビで沖縄料理の特集組まれてるね。できればスライサーを使うと楽だけど、包丁でもOK」

「やってみる!」


 彩夏は慎重に包丁を動かし、なんとか細長く切ることができた。

 フライパンにごま油を熱し、にんじんを炒める。


「うわっ、けっこう油を吸うなぁ」

「にんじんは油と相性いいからね。しんなりするまで中火で炒めよう」


 玲奈がツナ缶を開けて、油ごとフライパンに投入。しょうゆを回し入れる。


「ツナの香りがすでにウマウマぁ!」


 溶き卵を流し入れ、さっと混ぜる。


「卵がふんわりしてきたら、火を止めて完成よ!」

「わーい! じゃ、さっそくいただきます!」


 彩夏は箸を伸ばし、小皿にとって一口食べる。


「んんーーー! 栗さん、これ……絶対お酒に合うよね?」


 にんじんしりしりを一口食べたあと、ニヤリと笑う。


「うん、ツナのコクと卵のふんわり感、それにごま油の香ばしさ……これは確かに、酒が進むね」


 玲奈は満足げにうなずきながら、冷蔵庫を開けた。


「ちょうどいいものがあるよ」


 取り出したのは、一本の泡盛。


「えっ、泡盛!?  栗さん、いつの間にこんなの買ってたの?」

「前に近くのモールで沖縄フェアやってたときにね。開けるなら今でしょ?」


 カップに氷を入れ、泡盛を注ぐ。


「あたし泡盛って飲んだことないかも……」

「クセがあると思うかもしれないけど、水割りならスッキリ飲めるよ」


 彩夏は恐る恐るカップを持ち上げ、ひと口。


「……あ、意外と飲みやすい!」

「でしょ? じゃあ、しりしりと一緒に……」


 泡盛を口に含み、にんじんしりしりを食べる。

 ツナの旨みとふんわりした卵が泡盛の香りと絶妙に合う。

 炊きたての白米も用意したら晩酌開始だ。


「おいしい……! これ、最高の組み合わせじゃない?」

「沖縄の家庭の味と、沖縄のお酒。そりゃ合うよね」


 気づけば、ふたりは何度もおかわりをしていた。


「栗さん、もうちょっと飲も!」

「彩夏、そんなに飲んで大丈夫? 泡盛って結構強い酒だよ」

「だって美味しいし……! 今日は沖縄ナイトってことで!」


 いつものカップで乾杯して、くいっと飲む。にんじんしりしりの素朴な甘さが、泡盛の香りとともに広がる。


「沖縄料理、他にも教えて!」

「いいねぇ。次はゴーヤーチャンプルーでもやる?」

「食べたい! でもその前に……もう一杯! おかわりぃ!!」


 泡盛と、沖縄の味。

 ふたりの晩酌は、ゆるりと過ぎていくのだった。

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