第37話 ニクギュー!

 我々は、チークサン街の奪還に成功した。


「勝鬨をあげるのじゃー!」


「いくよっ! えい、えい、めーーーーー!!」


「「「「「めええええええええええ!!!!!」」」」」


 

 チークサンの街には、ひつじ達の喜びの声がこだましている。



「はあああ、よかったー! ボク、ボク、しょうぐん様の力になれましたかめえ?」


 ひつじ達を率いた羊飼い、ツーカイヒは感極まりながらオレに抱きついてくる。


 なにか太ももに固いモノが当たっているのだが、ポケットになにか入っているのかな?


 そんなツーカイヒを痩せカロさんがオレから引きはがして引きずっていく。


 どうしたんだろうか?



 そして、その空いたスペースに向けて王女様がオレにダイブしてくる。


 王女様はさすがにポケットのある服も着ていなければ、固いモノを忍ばせていることもない。


 王女様を受止め、その体重を受止める。


 まあ、ナイスガイなオレにとっては、父親の代わりに幼女をあやすことなど些末なことだ。


 戦勝の喜びを分かち合いたい気持ちはよくわかるからな。


 なので、頭をなでなでしてあげよう。




 すると、痩せカロさんに首根っこを掴まれて連行されたツーカイヒの方向から、ひつじたちのリーダーと思しき精悍なひつじがこちらに向かってくる。


 オレとそのひつじの目が合ったので、空いている手で敬礼を行うと、そのひつじも頭を下げてくる。


 うん、できたひつじだ。


 

 あとから聞いた話だが、なんでもこのひつじは出陣前、戦いを前に弱気になっていたツーカイヒにこう語りかけたそうな。


「家畜たちの街は、我々家畜で取り返します。ご安心メエされえ。」と。


 もふもふのもののふかな?




◇ ◇ ◇ ◇


 さて、ひつじに癒されてしまっていたが、戦後処理というものをしなくてはいけない。


 シオトギョギョー村の時もそうだったが、敵の正規兵の捕虜が結構な数発生している。


 前回は100人捕虜にして人魚さん達&ツマさんの慰み者兼強制労働担当としていたが、今回はどうしようか。


 なんせ300人だからな。


 とりあえずは自分達で寝泊まりする牢屋兼宿泊所を建設させている。


 ん? その作業中に逃げ出したらどうするんだって?


 うん、ひつじ達が見張っているから大丈夫。



 それに、


「おほほほモー! てめえら、カンタ様のために働けだモー!」


「おら豚どもブー! 人間名乗りたかったらカンタ様のために働きやがれブー!」


「コ、コケ‥‥‥」


 なんと、サキュバス家畜さん達がなぜかオレに忠誠を誓い、我が国の為に働いてくれることになったのだ。


 そんな、ついさっきまで敵だった奴らを信じても大丈夫なのか不安だったが、痩せカロさん曰く、「カンタ様に心酔したのであれば裏切ることはないでしょう」とあっさり返された。


 王女様も「わらわのカンタ殿はさすがじゃな!」と手放しで喜んでいらっしゃる。


 ちなみにオレはと言えばべつにサキュ家畜さん達に声すらかけてないのでなぜそうなったのかがわからない。


 まあ、わからないものは考えても仕方がないと割り切ることにしたからいいのだが。



 と、いうことで、どうやら敵兵の捕虜はしばらく強制労働要員として頑張ってもらうことになりそうだ。



 で、


 今回の捕虜は敵兵だけではない。


 と言っても、それは強制徴収されていた街人の民兵ではない。


 彼らは我が軍が街に突入するともろ手を挙げて歓迎してくれたのだから。


 では、他に誰がいるのかと言うと、 


 そう、オレ達の侵攻に徹底抗戦を示していた牛さんや豚さん、鶏さんたちだ。


 奴らはサキュ家畜さんたちがこちらの国に寝返った後も徹底的に交戦の意思を曲げないのだ。


 それがなぜなのかはわからないが、一回インプットされてしまった感情を書き換えられないのかな?


 なんて思っていたら、驚きの報告が来た。


 なんと、反抗的な牛さん達はすでに食材へと変貌を遂げていたらしい。



 オレが呆気に取られていたところ、すすすと近寄ってきたサキュ牛さん曰く、


「すべての家畜が従順になれば、情が湧いて食肉加工できなくなるのよモー。だから、処理しやすいようにしておいたモー。」


 な、なんと‥‥‥。


 うん、聞かなかったことにしておこう。



◇ ◇ ◇ ◇


―Side中嶋香織、吉田つかさ―


「キター! きたわよ香織! カンちゃんからの発注よー!」


「おお久々! で、推し君は今回は何をご所望なのかしら?」



「えーっと、『醤油』と『ワサビ』?」


「おお、調味料ね! それなら『なかじま商店』に常備してるわ!」



「でも、『一年分』とか在庫あるの?」


「ふっふっふ、こんなこともあろうかと、業務用のスーパーやカストコとかロッピカと業務提携しておいたのだよ! 余裕!」



「ふーん、そうなると、その醤油とワサビを使って何を食べるのかな?」


「取り合えず、弁当部門に『海鮮丼』100個発注しときましょうね!」



「不良在庫になりそうね‥‥‥」





――翌日。


「香織! 今度はひつじ用のジュラルミン製マスカレードマスク(フルフェイス)と足甲1000セットだって!」


「ああ、海鮮丼が売れないなんてーーーー! 発注ミスぅ!」



「私は鉄工所に戻って制作に入るからね!」


「ああー海鮮丼が余るぅ! 人手が欲しい! やす子早く助けに来てえ~~!」



 この日、『なかじま商店』の海鮮丼激安セールが行われ、SNSで発信された記事を見て遠く県外からもお客さんが押し寄せたとか‥‥‥。







^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


 作者からのお礼とお願いです!


 数あるカクヨム小説の中から、この作品にたどり着いてくれた皆様に心から感謝申し上げます!



 もし、もしも『面白い』とか『続きが読みたい』とか少しでもお思いになって頂けましたら、何卒♡や★での応援のほどを宜しくお願い致します!


 レビュー、感想もお待ちしております!




 


 

 

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