突然届いた謎言語新聞の求職欄から異世界の宰相に就職しましたw
桐嶋紀
第1話 ナイスガイ佐藤甘太
ガチャガチャ
ガチャン
「ん? なんだ? 郵便か?」
オレの名前は
20代前半のナイスガイだ。
ナイスガイだが、残念ながら無職である。
ナイスガイなのに、なぜ無職なのか?
それは、オレがナイスガイであるからだとしか答えようがない。
え? もっと詳しく説明しろだって?
しょうがねえ。
ナイスガイであるこのオレが直々に説明してやろう。
オレは、おぎゃーと生まれたときからナイスガイだった。
幼稚園も、小学校も、中学校でもナイスガイ。
つまり、顔も良く、よくモテた。
甘いマスクの甘太くんなどと、地元マダムからはよく言われたものだ。
成績も常に上位。
運動神経もよく、女子からだけじゃなく男子や先生たちからの評価も高かった。
まあ、生徒会長とかよくやらせられたな。
で、高校に行っても当然ナイスガイだ。
まあ、下手に成績が良かったので県内一の進学校に進学しちゃったから、さすがにそこでは成績上位にはなれなかったが。
そして、高校生ともなれば、モテる度合いもグレードアップする。
小中学生の頃のような、ラブレターとかバレンタインとか放課後の待ち伏せとか体育館裏への呼び出しとかの可愛いものじゃなくなってくるのだ。
スマホに粘着着信が3分ごとに入ったり、自宅に毎日違う相手が押しかけてきたり、体毛の大量に入った弁当が送られてきたり、電車の中で逆痴漢されたりなど。
まったく見覚えのない女子に、街中でいきなり避妊具を片手にスカートをめくりあげながら迫られたこともある。
それでもナイスガイであるオレは下手な誘惑や過度な接触に折れることもなく、特定の女性という関係を誰とも構築せずに、ナイスガイばりの社交性で世の中を上手く渡っていた。
そして、それなりの大学に進学し、ナイスガイは人生初のバイトを始める。
今にして思えば、その時のバイトのチョイスが良くなかった。
社交性と協調性のあるナイスガイなオレは、居酒屋のホール係というバイトに全力で取り組んだ。
笑顔を絶やさず、感謝の心でお客様に料理とお酒を運び続けたのだ。
すべてが順調に思えていた。
だが、とある日。
順風満帆に思えていたそんな日々は、偽りの楼閣であったことに気が付かされたのだ。
思えば、もっと早くに気が付くべきだった。
バイトを始めた頃には、頭にネクタイを巻いたりした会社帰りのサラリーマンのおっちゃんとかが、それなりの数お客さんとして来てくれていた。
だが、その時には。
もはや客席には妙齢の女性の姿しかなかったのだ。
そして、店長やバイト仲間も。
最初に面接を受けた時の店長は60歳くらいの男性だった。
調理場にもそれなりの年齢の男性が多く、ホール係のバイトもオレと同年代の男子が多かったはずだ。
それなのに、その時の店長は40手前の女性だったし、正社員さんも、バイトさんすらも全て女性だったのだ。
つまり、その店内にいる人間のうちで男性はオレ一人という異常な状況。
なぜもっと早く気付かなかったのだと当時のナイスガイに教えてやりたい。
そして、日常は突然決壊する。
まるで大きなダムが表面張力で持ちこたえていたかのような状況に、蟻の一穴が穿たれたのだ。
暴走した女性客が、季節外れのロングコートをはだけ、全裸となって生ビールジョッキを両手に持ったオレに突進してくる。
それを見た他の客も、抜け駆けは許さじと手にしていた割りばしやグラスを投げ捨て衣類をはだけながらオレに向かって突進を開始。
はては、オレを女性客の毒牙から守らんと、店員の皆さんも揚げている途中のコロッケやら焼きたての焼き鳥やらを投げつけて応戦。
店内は大混乱となった。
混乱はさらに拡大し、揚げ物の油に引火して店は全焼。
幸いにして死者は出なかったものの、軽いやけどを負った半裸の女性が数多く救急車で運ばれていくという事態となり、その様子は多くのマスコミによって全国に報道される。
当然、居酒屋は閉店となり、オレも新たなバイト先を探すことになった。
だが、その時の騒動は多くの人に認知されていたようで、「女性を惑わす魔性のナイスガイ」などと顔写真と実名付きでテレビとかに報道されてしまったものだからもう大変。
某女性週刊誌に「甘いマスクの甘太くん」と昔のあだ名で書かれていたのには驚愕した。
その結果、経営者や店長といった人種の人たちからは、軒並みこのナイスガイはブラックリストに載せられてしまい、新たなバイト先は結局大学を卒業するまで見つかることはなかった。
そして、その悲劇は就職活動においても繰り返される。
大学の成績はほとんどが優と良。
可などは選択を誤った第2外国語くらいのもので、まあ、全体的に優秀と言える成績であったにもかかわらずだ。
顔写真のついた履歴書を送った会社は全て一次審査で不合格。
数少ない、テキストデータのみの書類選考には全て合格したのだが、面接になるとオンラインだろうが直接面接だろうが、これまたすべてが不合格という悲劇に見舞われた。
その結果、大学を卒業して数か月たった今でもその後の進路が決まっていない。
一部、某芸能事務所や夜に開店する接客を伴う飲食店などからは熱狂的なオファーがありはしたのだが、それは最後の手段としたいところ。
外を歩くと顔を見られて騒ぎになることもあることから、必要最低限以外の外出以外は避ける無職生活。
そう、
つまり、このナイスガイ、佐藤甘太は無職のひきこもり状態になってしまったのである。
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新連載です!
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