第6話

「優子ちゃん、気を付けて学校に行ってね。」

「おねえちゃん、ばいばーい。」

「行ってらっしゃい。」

 お父さんの座に遠慮なく座ったこの人は、多分いい人。お母さんから無条件に笑顔を見せてもらえるこの子も、多分いい子。

 二人が来てから、お母さんが働きづめることはなくなった。家にいることが多くなって、笑顔も増えた。

 並ぶ三人を傍から見たら、もう立派な幸せそうな家族だ。

 邪魔者同然の私は、優等生になるしかなかった。昔から、そうだった。こちらを向いてくれないお母さんに見てほしくて、テストはいつも満点。好き嫌いはしなかったし、苦手な運動だって頑張った。習い事だって、頑張った。話すのは得意じゃなかったのに、たくさん話しかけた。

 必死でいい子でいた。疲れて諦めそうになった時だけ、お母さんはわたしを見てくれていた。

 だから、辞められない。

「どうして、血が繋がっている私より、他人の子のあの子を、お母さんは好くんだろう。」

 いい子になった。男の人と女の子を受け入れるフリをした。高校二年生になったけれど、成績は学年で十番以内だ。笑顔でいた。会ったことない人に対するお母さんの愚痴も悪口も聞いた。優等生で、学級委員長だってしてる。先生からもクラスメイトからも、好いてもらえている、優等生の私を。

 鏡に映る私は、笑っていた。なにも、面白くないのに。なにも、思い通りにいっていないのに。お母さんの一番は、あの子とあの人なのに。

「疲れた。」

 そう言った私は、やっぱり笑っていた。

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