第16話 タツオミの勉強会
それから、三人で勉強することが増えた。図書館が満席続きだったので、タツオミが場所を提供してくれることになった。その部屋は、タツオミの部屋とは別で、兄の時代から友だち同士で勉強できるように用意された部屋なのだという。ちなみに兄は、難関大学をすでに卒業している。
部屋には、参考書、辞書、辞典、ネット環境、受験雑誌がずらりと並んでいた。その部屋専用の小さな冷蔵庫やウォーターサーバーもある。
「父と兄曰く、同期って大事みたいなんだ。みんな同じように出世すれば、自分がポジションについたときに相手もそういう立場になってるだろ? そうなれば、他の分野で活躍してる同期と、お互いに仕事の依頼がしやすいらしいんだ。」
「高校時代からそんなこと意識してるなんて、すごいな……」
恋愛ばかりに気を取られがちな自分とは大違いすぎる。
「ま、それは結果論で、単に気の合う仲間は尊いよね」
タツオミはいつもの気さくな笑顔を見せた。それはある。俺が二人から見て、仲間と言えるレベルかはわからないけど。
そんな恵まれた環境になり、自然にハルマの部屋に行くことは少なくなった。
それまで、俺は英語と国語をハルマに教えていたが、うまく教えられないときはタツオミが解説を加えてくれた。俺より10倍はわかりやすかった。
俺はハルマから数学と理科を教えてもらっていて、理科は良かったが、数学が教わっているわりに伸びていなかった。その問題は解けるようになるのだが、なぜか点数に繋がらないのだ。
「リョウスケはもう少し類題演習をやり込んだ方がいいよ。これ、使ってみて」
タツオミはそう言って、問題集を出してきた。
「すごくまとまってて……わかりやすい」
「この問題集だけで土台は固められる。リョウスケはミスなく解けるのが強みだよ。数学は、解法がわかったって答えが出なきゃダメだから」
俺の強み……。苦手な数学にすら強みがあるなんて嬉しかった。
「小学校や中学校の時、結構勉強したんじゃない?」
「あの頃は、まだハルマに負けたくない気持ちがあったんだよ」
「”あの頃は”なんだね」
タツオミは何がおかしいのか、笑った。
「リョウスケが数学が苦手なイメージはなかったんだけど」
ハルマが言う。
「意地だよ、意地! でも、なんか段々数学に興味が失せてきてね……」
「解き方を丸暗記してた?」
タツオミが言う。
「言われてみればそうかも……」
「中学までは義務教育だから、テストはある程度みんなが解ける問題を出すよ。だから丸暗記でも行けちゃう。その癖が抜けないと、高校から大変なんだよね」
「楽しちゃダメなんだなぁ……」
「王道が一番の近道さ」
タツオミがウォーターサーバーのお湯で溶かしたほうじ茶をすすりながら言った。
「カッコいい……。言ってみたい、いつか」
思わずつぶやいた。
「一番、リョウスケに縁が遠いセリフだね」
ハルマに言われて、改めて自分を振り返るが確かにそうだ。
「……そうだな……。王道行ってるものないもんな」
ハルマとの関係なんて、まさにだ。
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