第11話 ハルマの告白
もう一度考えてみる。俺はハルマが恋愛的に好きなんだろうか。うーん。好きは好きだが、やっぱり、恋人同士のような甘い好きとはちょっと違う。うん。キス友。モテない俺の性欲発散と、モテるハルマの練習として……。
そう考えてしばらく悶々としていたが、ハッキリさせたくない気持ちが勝り、流れに任せることにした。
♢
ある日の学校終わり。いつものようにハルマとランニングをする。ハルマの家に戻り、シャワーを借りる。入れ違いにハルマが浴室に行き、俺は部屋ですぐに勉強とはいかず、ぼんやりしていた。
しばらくして、ハルマも部屋に戻ってきた。
「あれ? ハルマ、なんかいい匂いがする……」
シャンプーや、ボディソープとも違う香りだった。
「前にリョウスケが好きだって言ってた香水だよ。覚えてる?」
ちょっと前、彼女ほしい願望がピークのとき、香水を見に行ったことがある。結局何も買わなかったが、女の子用の方で好みのものが見つかった。ハルマが着けているのはソレだ。
「……よく覚えてたね……」
ハルマはちょっとほほえんだが、すぐ顔を背けた。
確信した。ハルマは、俺のことが好きなんだ。
そう気づいたら、勉強など全く頭が働かない。いつもならすぐに集中できるハルマも、手が動いてない。一秒がこんなに長いとは知らなかった。
「……リョウスケは、タツオミのこと、どう思ってるの?」
「いい友達だよ」
明らかに俺の声はぎこちなかった。
「そっか。俺、ずっとリョウスケとは二人で過ごしてきたから、三人って慣れなくて。最近二人が仲良いから、俺は邪魔なのかな、って」
「いやいやいや! 友達に邪魔とかってある?」
嫉妬してるんだ。タツオミと仲がいいかと言われると、俺の不出来にタツオミが親切なだけなんだけど。
ハルマは視線を床に落として、唇を噛み締めている。
「も、もしかして……ハルマは……俺のことが好きなの?」
聞いてしまった。しかも直球で。これしか言葉が思いつかなかったのだ。でも、単に興味からじゃない。ハルマが可哀想に思えたからだ。もし本当に俺が好きなら、こんな宙ぶらりんな関係は辛いだろうし、元々タツオミと仲が良かったのはハルマが先で、その友情にもヒビが入りかねない。
ハルマはハッとこっちを見て、顔を赤らめた。そして、すぐにまた視線を外した。
「そうだよ……。好きなんだ、俺は。リョウスケのことが」
こんな日が来るなんて、考えたことがなかった。
「そうなんだ……。それって、いつから……?」
「……中3のとき、生徒会やってたじゃん。お前が副会長で、俺が議長。その時の、書記だった女子がお前のこと好きだったんだ」
「え? 知らなかった」
その子は大人しかったけど、それなりに可愛かった。
「それを知って、嫌な気分になった自分がいたんだ。リョウスケがその子と付き合ったら、俺とリョウスケの時間が無くなるなって……。だから、自分はリョウスケのことが好きなんだってわかったんだ。俺は、ただ……リョウスケとこうしてずっと一緒にいたいんだけなんだけど……」
ハルマは、恋愛においてはなんの意味もなさない教科書を見つめたままそう言った。
「そうだったんだ……。全然気づかなかった……。じゃ、じゃあ、このキスの練習って……意図的に??」
「冗談で言ったつもりだったけど、実際そうなって俺も驚いたよ。でも俺は……正直、嬉しかったよ……」
ハルマは儚げに笑った。
「リョウスケは……俺のこ、どう思ってるの?」
ハルマに切なそうな表情を向けられ、心臓の鼓動が速くなる。
「俺は……その、ハルマのことは友達として今までずっと好きだし、キスもできちゃうくらいだから、たぶん、好きなんだよ。でも、なんというか、まだ自分には勢いがない、っていうか。気持ちに整理がつかないんだ……」
ハッキリ言えないのは申し訳なかったが、ここで本当に恋人同士になるのは、嘘をついている気がした。
「うん、わかった。ありがとう。無理に好きになってくれなくていいから……」
ハルマの香水の匂いが鼻をくすぐる。
ハルマはずっと好きでいてくれて、勇気を出して告白してくれた。なのに俺は……これでいいんだろうか。
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