第9話 別れと新たな出発
卒業式の日、校庭には満開の桜が咲き誇り、薄紅色の花びらが風に乗って舞っていた。三年間の思い出が詰まったこの学び舎を後にする日が訪れ、生徒会のメンバーたちもそれぞれの感慨を胸に秘めていた。
生徒会室では、澪と楓が最後の荷物を整理していた。楓が微笑みながら、古びた会議ノートを手に取る。
「これ、最初の頃に使ってたノートだね。澪ちゃんの字、すっごく丁寧だなぁ。」
「うるさい。お前が適当すぎただけだ。」
澪は軽くため息をつきながらも、どこか懐かしそうに楓を見つめた。
「でも、これも全部思い出だね。」
楓がノートを抱きしめるように胸に当てると、澪は小さく笑った。
「お前、本当に変わらないな。」
「澪ちゃんがいてくれたから、僕は僕のままでいられたんだよ。」
その言葉に、澪は一瞬言葉を失った。楓が真剣な表情で続ける。
「これから先も、僕は澪ちゃんと一緒にいたい。どんな未来でも、一緒に進んでいきたいんだ。」
「……お前、本気で言ってるのか。」
「もちろん。本気だよ。」
楓の瞳に映る決意に、澪は静かに頷いた。そして、少しだけ照れながら口を開く。
「俺も、お前と一緒にいるのが当たり前みたいになってた。でも、それが悪い気分じゃない。」
楓の笑顔がぱっと花開くように輝いた。「じゃあ、これからもよろしくね。」
「……ああ。」
澪は恥ずかしさを隠すように顔を逸らしながらも、握りしめた手をそっと緩めることはなかった。その時、楓が指を絡ませるように澪の手を握り直す。
「恋人繋ぎ、してみたかったんだ。」
澪は一瞬驚いた表情を浮かべたが、楓の無邪気な笑顔に小さくため息をつきながらも握り返す。
「調子に乗るなよ。でも……悪くない。」
楓はその言葉に嬉しそうに笑い、二人はしっかりと手を繋いだまま、生徒会室を後にした。
卒業式の後、校門前には生徒たちが集まり、記念写真を撮り合っていた。碧と大地も一緒にいたが、二人は少し離れたところで澪と楓を見守っていた。
「結局、あの二人、良い感じになったみたいだな。」
大地が笑いながら言うと、碧も頷いた。「うん。なんだかんだ言って、あの二人が一番お似合いだよね。」
「俺たちも負けてられないな。」
碧は驚いたように大地を見たが、すぐに微笑み返した。「そうだね。これからもみんなで繋がっていこう。」
校庭に響く笑い声と、温かな春の風。生徒会のメンバーたちは、それぞれの未来へと歩み始めていく。
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