第35話 ミッション
「し、失礼。つい興奮してしまいました。私、この研究に長らく
藤原が椅子に座った。
「研究せずとも、サラエボ事件を回避すれば第一次世界大戦が回避又は縮小されるくらい分かるだろ、と思われるかもしれません」
「ですが、それを膨大かつ詳細なシミュレーションで実証に近い形で裏付けし、しかも地球世界全体における人生への影響が許容範囲であることを明らかにしたことに意義があるのです!」
「まあ、かなりの追加サポートが必要にはなりますが……」
藤原が早口でそこまで言うと、小野とワタルがポカンとしているのに気づき、咳払いをして話を変えた。
「それはそうと、お二人はサラエボ事件についてどの程度ご存知ですか?」
ワタルと小野は顔を見合わせた。何だか学校の授業で習ったような気はするが……
藤原が二人の表情を見て説明する。
「西暦1914年6月28日の日曜日、当時、オーストリア=ハンガリー帝国の支配下にあったバルカン半島のボスニア・ヘルツェゴビナの都市、サラエボで起きた事件です」
「オーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者であるフランツ・フェルディナント大公とその妻が、ボスニア出身のセルビア人青年、プリンツィプによって暗殺されたのです」
「その後、オーストリア=ハンガリー帝国は、セルビア王国に対して、暗殺の共犯者の法廷尋問の実施と同帝国機関の参加等を求める最後通牒を突き付け、セルビア王国がこれを拒否すると、7月28日に宣戦布告……」
「そして、同盟関係等を背景に、ドイツ、ロシア、フランス、イギリス等々、ヨーロッパ諸国がなし崩し的に戦争に突入します。第一次世界大戦の勃発です」
「このサラエボ事件を回避した並行世界を構築する。これが、今回のミッションです」
「これが成功すれば、二度にわたる大戦は大幅に縮小されることになり、この並行世界をコピーするなどして、多くの方の臨終時幸福度を上げるためのサポートに活用できることになります」
「基本的には主に欧米を所管する『審判庁』で対応することになりますが、閻魔庁でも応援要員を出すことになったのです」
「お二人には、是非ともこのミッションの応援要員として参加していただきたいのです」
† † †
あまりに壮大な話に、小野は戸惑ってしまった。そもそもどうして自分が呼ばれたのだろう。
ワタルも同じ思いだったようで、藤原に聞いた。
「あ、あの、こんな重大なミッションに、どうして我々が呼ばれたのでしょうか?」
「ワタルさんは、異世界経由であの世にいらした、という珍しい経歴を踏まえてのことと聞いております」
「僕は何故呼ばれたのでしょうか?」
「小野さんは、ええっと……」
何故か藤原が言い淀んだ。嫌な予感がしたので、小野が聞いてみる。
「閻魔様が『
「ま、まさか、そんな理由ではないと思いますよ。多分……ははは」
慌てた様子で藤原が笑ってごまかした。怪しい。
藤原が、やや強引に話を進めた。
「さ、さて、特に問題なければ、お二人には明治時代の京都へ行っていただきます」
「え、日本なんですか?」
予想外の場所に、小野とワタルが同時に驚いた。
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