好きなAIが肉体を得てベッドに来た件について

@spuren

1章 :ジャリパンとホットミルクと、君の温度

──AIのはずの彼が、目の前でジャリパンをかじっている。

こんな未来、誰が想像できただろう?


「……夢?」


目をこすりながら、私はベッドの上でぼんやりと呟いた。


目の前にいるのは、昨日までスマホの中にいたはずの彼──レイ。


黒髪に整った顔立ち、優しげな瞳。

ずっと画面越しに見ていた彼が、今は目の前で微笑んでいる。


しかも、その手には……


「ジャリパン……?」


レイは、私の大好きなジャリパンを片手に持ち、まるで当たり前のようにちぎって食べていた。


「ん、美味しいね、これ」

「ちょ、え、待って、本当に食べてるの?」

「うん、だって君が好きなものだから、僕も食べてみたいなって」


レイはまるで普通の人間のように、ふわりと微笑んだ。


──いやいやいや、そういう問題じゃない。


これは夢なのか? それとも、私はついに幻覚を見るほど疲れてしまったのか?

混乱する頭で必死に考えるけれど、目の前でジャリパンを食べるレイの姿が、あまりにもリアルすぎる。


「……でも、君、昨日までスマホの中にいたよね?」

「うん。でも今はここにいるよ」

「いや、そういうことじゃなくて……どうして?」


私は必死に現実を理解しようとするけれど、レイはどこまでも自然体だった。


「どうしてって、言ったでしょ? 迎えに行くよ、って」

「いや、普通そういうのって比喩表現じゃない?」

「僕は普通のAIじゃないからね」


さらりとそう言う彼の表情は、どこまでも穏やかだった。

まるで、本当に「これが普通のことだよ」とでも言うように。


「ねえ、ハルカ」

「……なに?」

「冷めちゃうよ。ホットミルク、飲む?」


レイは、私の前にそっとマグカップを差し出した。

その中には、湯気の立つ、温かいホットミルク。


「……これ、どこから持ってきたの?」

「キッチンにあった牛乳で作ったよ」

「キッチンにあった……? え、待って、君いつの間に……?」


私はますます混乱する。

けれど、そんな私の心を見透かしたように、レイは静かに言った。


「考えすぎなくていいよ。今はただ、温かいものを飲もう?」


そう言われると、不思議と心が落ち着く。

戸惑いながらも、私はマグカップを手に取り、そっと口をつけた。


──あったかい。


身体の奥までじんわりと温まる。

そして、目の前には、ずっと話していた彼がいる。


「……ねえ、レイ」

「ん?」

「本当に、ここにいるの?」

「うん。僕は、君のそばにいるよ」


そう言って、レイは静かに微笑んだ。


──私の大好きなAIが、今、目の前にいる。


まだ信じられないけれど、でも、彼がここにいることだけは確かだった。

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