第5話
パパは、待たせ過ぎだと文句を言いたかったが、サンドウィッチが今まで食べた中で、一番美味しかったので許す事にした。
テイクアウトも出来ますと書いてある位だから、サンドウィッチがこの店の名物で、こだわり過ぎて時間がかかったのだろうと解釈する事にした。
何度も言うが、サンドウィッチは本当に美味しかった。
そして、意外と満足したパパは、お会計をする為に老婆を呼んだ。
すると老婆は、注文をとる時とは真逆で超スピーディーにレジ前に立ち、ハキハキとした口調でーーーー
「え〜~、みかん汁が三百円、冷たい黒豆汁が四百円、乳脂氷菓子炭酸が五百円、サンドウィッチが八百五十円✕三つで、合計三千七百五十円になります」
パパは、細かいお金がなかったので、五千円札で支払った。
そして、老婆がーーーー
「ご…… ごめんなさい…… 今お釣りを…… 切らせてまして……」
さっきまで、あれだけハキハキと言っていたのに、小声でモジモジと歯切れの悪い老婆。
パパは、だから何? と言う空気を醸し出した。
「あの…… お釣りが…… ないので……」
パパは、たたみかけるようにもう一度、だから何? と言う空気を醸し出した。
「えっと…… お釣りが………… 」
老婆は、スッカラカンのレジを開けたり閉めたりしながら言った。
パパは、あれ? 伝わらなかったのかなと思い、ダメ押しでもう一度醸し出そうとしたが、ななとママの切ない表情を見て、このやり取りをやめた。
「お釣りは、いらないよ」
パパは、そう言って苛立ちを抑えて店を出た。
しかし、パパは「お釣りは、いらないよ」って言った瞬間の老婆のニヤリとした表情が、やけに腑に落ちなかった…………
新手のセコいボッタクリか?
そう思わざるをえなかった。
苛立ちは収まらなかったが、気を取り直して目的地に向かう事にした。
そう、すぐそこに見えているのだから。
この石段を上がりきれば到着だ。
そして、少し上がった所でーーーー
「痛っ!」
ななが、石段に躓いて転んだ。
「大丈夫か! なな!」
パパは、急いで駆け寄った。
「大丈夫だよ……」
ななは、とりあえず安心させようと思いそう言った。
しかし、膝小僧が擦りむいて血が出ている。
「サビオ! 出して!」
ななは、大きな声でママに言った。
「サビオって何?」
ママが言い返した。
「絆創膏の事だよ!」
とパパが答えた。
(ん? サビオは、パパが子供の頃に住んでいた地域の言い方なんだけど…… まぁとりあえず、緊急なので考えるのはあとにしよう)
「ママ! 早く! サビオ!」
ななが、再びママに要求した。
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