第6話 再度の疑念
ある日のこと。
「あの女、正直なところブスだな」
啓介はギクリとした。
「そ、そうかな。まあ、人それぞれだろ?」
未悠は誰が見ても絶世の美女だと思っていたのに。
だが、一度だけではない。
別の日にも友人が未悠を見て同じような事を言った。
「お前、あんなオバサンっぽい女に興味あるの?」
そう言ってきたのだ。
啓介はさすがに自分の目を疑い始めた。
考えてみれば、啓介が未悠と最初に出会ったのは、彼女がまだ大学生の頃だった。
純真無垢な笑顔が啓介を引きつけたのだ。
しかし、再び未悠と再会したとき、彼女はすでに社会人になっていた。
明るさは変わらなかったが、その振る舞いにはどこか余裕があり、以前のような初々しさは見られなかった。
むしろ少し大人っぽい印象さえある。
啓介はそんな未悠に多少の違和感を覚えながらも、気のせいだと思うようにした。
ある日、ふと未悠の写っている写真を見たときにふと違和感を持った。
啓介は眼鏡を外して写真を確認してみる。
そこに写っているのは、確かに未悠に違いなかったが、どう見てもオバサンくさい顔立ちだった。
「嘘だろ……」
再び眼鏡をかけて写真を見ると、美しい未悠が微笑んでいる。
啓介は眼鏡をかけたり外したりしながら写真を見続けた。
そうしているうちに奇妙な感覚が沸き上がって来る。
「そういえばこの眼鏡、以前落としたときにキズがついたはずなのに……
あのキズはどこにいったんだ?」
啓介は愕然とした。
「お前、また何かしたな。ゼノ!」
啓介は再びゼノを探し出し、問い詰めた。
「ゼノ、あの眼鏡にどんな細工をしたんだ?」
特に悪びれる様子もなく、ゼノは相変わらずの笑みを浮かべて言った。
「案外早く気づいたんだな。さすがだよ、啓介」
「ふざけるな。なぜ眼鏡を通した時だけ未悠が美女に見えるんだ」
「オレがさ、ちょっと入れ換えたのよ。前のは過去の記憶を書き換えるハンコだったけど、今回のは見たものが書き換えられる眼鏡なんだ」
啓介はゼノを
「つまり俺の目にはオバサン顔が絶世の美女に見えていたってことか?」
「そういうことだな」
その答えに啓介は天を仰いだ。
ゼノはニヤニヤ笑いながら啓介に尋ねる。
「で、どうして欲しいんだ。未悠を本物の美女にしたいのか。それともこのままでいいのか?」
啓介は必死に食い下がる。
「未悠を美女にして欲しいに決まっているじゃないか!」
しかし、ゼノは肩をすくめて首を振った。
「それは無理だな」
「何だと?」
「他人にどのように見えても、お前が満足ならそれでいいじゃないか」
啓介は言葉を失った。
未悠は確かに自分にとって大切な存在だ。
しかし、事実を知ってしまった以上、前と同じように接することは出来ない。
こうして、啓介は未悠と別れるべきか、それともこのまま一緒にいるべきか、強い葛藤に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます