第16話 古い戦略と悪魔

どうやら俺は少し気を失っていたらしい、頭を打ったのか出血していて視界が多少ぼやけ、体が動かない。足も折れているようだ。そして地面が崩れた衝撃でガラス板が割れてしまったのか2冊の本が目の前に落ちている。


「君が考えた作戦かな?悪くなかったよ、並大抵の魔法使いならそれで勝てたかもね、でもいささか古いように感じるよ、防衛術の発展した今では、その作戦は悪手に回ることがある。覚えておくといい」


なるほど……勉強不足だったな……


「さて、本を渡してもらおうか」


アルバートとアルフレッドは既に"液体の影"に捉えられていた。2人とも気を失っているのか、ピクリとも動かない。


マテウスが重なった本の一冊に本を手にとるが、言うことの効かない体を無理やり動かし本を奪われないように引っ張る。


「諦めなさい」


簡単に奪い取れるだろうに、まだ言葉をかけてくる。本当に争いの嫌いな人なんだろう。


「呪いがなきゃ俺だって……こんな本……手放してますよ。あなた…は呪いにかかってませんよね?どうやって……解いたんです?」


「私は呪いになんてかかっていないよ。なんならこの本がどう言ったものなのかも知らないさ。」


何?


「どうせ後で記憶は消させてもらうから話しても意味は無いんだけど、大臣からの命令なんだよ、この本を集めること、そしてこの本を決して開いては行けないこと。だから呪いがなんの事なのか分からないけど、かかっているとしたら大臣の方だね」


「なるほど……」


「今楽にしてあげる」


マテウスが杖を向けてくる。



〜 アルバート視点〜


……気を失っていたのか……イッ……今俺は捕まってるんだな……アルフレッドも……アランも……


目線を動かし状況を確認する。そして最悪な光景が目に写ってしまう。激しい戦闘のせいなのか、地面が割れたせいなのか、枕がぐちゃぐちゃに破けていた。


あっ……あぁ……あぁぁ


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」


アルバートの体の周りに黒いオーラが立ち込め、上で抑えていた"液体の影"がかき消される。



〜 〜 〜


「なんだ?……」


マテウスが本を無理やり奪い取り振り返る。


「あれは……悪魔……」


「悪魔?そんな訳が……」


アルバートの周りに立ち込める黒いオーラが段々と形を作っていく。腕には鋭い鉤爪を、頭には2つの動物の耳を、腰の辺りには三本のしっぽを。まるで獣のように。


「ガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?」


獣のような鳴き声が響く。


そう認識した途端、アルバートは姿を消した。


「どこn!」


グサッ!


姿を見失ったのもつかの間、気がつけばアルバートは、マテウスの腹を右腕で貫いていた。


「ゴフッ」


マテウスは吐血しアルバートと共にアランの横へと倒れ込む。


「ガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


アルバートは右腕をマテウスの腹から抜こうとするが倒れ込んでしまったため、腕を抜けずにいた。


「これは……まいっ……たね……最後に……これ……だけ……でも」


そういうとマテウスは先程奪い取った本を1冊どこかへ転移させた。


その後マテウスの目から光が消え、その途端、先程まで鳴き声を上げながらマテウスの腹から手を抜こうとしていたアルバートは元に戻り、正気を取り戻した。


「……あっ……また...俺は……また……あっあ……あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」


腕を無理やり動かし腹から抜けた血まみれの腕を見て、アルバートは取り乱す。


まずいな……このままだとまた暴走するかもしれない……


「なっなんや!何が起こった!?」


すると意識を取り戻したのかピンピンとしているアルフレッドが走って来た。


「うわって、ええ!?なんやこれ!」


「アルフレッド……手を……かせ」


軽く回復魔法をかけてもらい、肩に腕を回し取り乱しているアルバートの目の前に連れて行ってもらった。

そしてアルバートの顔を両手で掴んだ。


「目を見ろ!」


「あっあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」


「お前は殺していない!」


「僕は……僕は!!」


「しっかり目を見ろ!お前は殺していない!」


「僕は……殺して……ない」


「そうだ、お前は殺してない、少し休め」


「やす……」


そう言うとアルバートは眠ったかのように倒れた。


「えっ今何したん?」


「暗示だ……それより……ここをどうにかしないとな……」

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