第2話 魔法省の人間と本

列車が出発してから1つ目の駅を通過した頃、そのホームには灰色のスーツとハットを着た2人の男がいた。


「あの汽車か。」


「あぁ。」


「どの車両だ?」


「後ろから3つめだな。」


「では取り掛かるとしよう。」


そう言うと片方の男が突如として消えた。

それに続いてもう一人の男も姿を消した。


〜 汽車 〜


そうそうに会話を諦めた俺は個室に常備されている新聞を手に取る。気になるものはないか見出しをサラッと見る。


9月1日 カークランド新聞

ついにコンスタンティン大臣の書記、ジェンナ氏も行方不明に! 魔法省関係者の行方不明事件はこれで9人目!今後の動きに注目集まる。

教会での事件から半年、未だに手がかりなし!

全国の魔法学校の入学式が始まる!などなど


見出しにもある通り、今カークランド魔法省では失踪事件が起こっている。それも大臣と深く関わるものばかり。物騒な世の中だ…大臣はどう動くのか…


ガタッ


そうしていると、汽車の揺れとは別に不自然な音が聞こえた。

俺は咄嗟に上を見た。

グランドールもそれに気がついたのか個室の天井を向いた。


車両の上で何が起こったのだろうかと思ったその瞬間、ゴンッ音ともに激しい衝撃が走った。


「無事かMr.クランドール。」


「あぁ。」


念の為お互いに杖を抜く。

クランドールの杖は黒く凹凸の少ないシンプルなデザイン。アランの杖は石でできた杖で持ち手より少し上あたりが3センチほど透明なクリスタルになっていた。


「とりあえず出てみよう。俺から出る。」


扉を開けるとそこは木々の並ぶ森の中だった。

続いてクランドールも個室から出てくる。


「ここは…」


どうやら俺たちの個室だけこの森に飛ばされたらしい。


そして個室から10メートルほど離れたところに二人の男が突然現れた。

俺とクランドールは杖を構える。


「いやいや、警戒しないでくれ、怪しいものじゃない。少し聞きたいことがあるだ。」


二人の男は3〜40代くらいで杖を持ってはいるが片方は両腕を完全におろしており、1人は手のひらを向け、無害であるとうったえるかのようにアピールする。


しかしこちらが警戒をとくことは無い。


「いきなり個室ごとこんな場所に移しといて話を聞くだけ?怪しくないというのは無理があるのでは?」


クランドールが今にも魔法をはなとうとしていたので右手で杖を向けながら左手を広げ静止さる。


「まぁたしかに、手荒な真似をしたことは認めよう、ことが済んだらすぐに元に戻すよ。聞きたいのはある本についてだ。」


そう言うと男は1冊の黒い本を見せてきた。


なるほど…厄介だな…


「これに似た本を持っているだろう?それを渡してくれないかい?」


「そんなものは知りません。」


クランドールが返答する。


「なるほど?となると持っているのは君だね?」


男はクランドールからこちらに目を向けた。


「残念ながら知りませんね。」


「…閉心術か…流石アストラの生徒と言ったところかな。」


こいつ…今覗きやがったな?どうするこの状況…かなりまずいぞ。


「マテウス、眠らせてしまえばいいだろう、あまり時間はないぞ?」


ずっと黙っていた片方の男は痺れを切らせもう片方の男に話しかける。


「まぁまてルーカス、そう焦るな。私たちは魔法省の者だ。とある事情でこの本と似た物を回収している。本当に心当たりはないんだね?出来れば手荒な真似はしたくないんだが。」


どうする…今ここでことを荒立てるのはまずい。


「はぁ…"麻痺せよ"」


ルーカスと呼ばれた男はマテウスと呼ばれた男に呆れたような素振りを見せながらも、杖から呪文を放った。


防ごうと思ったがクランドールが先に動いた。


「"守れ"」


そう言うとクランドールの杖から透明な膜のようなものが現れ呪文を弾いた。


「ルーカス!よせ!まだ子供だぞ!」


「だからなんだ!我々は秘密裏に行動しているのだぞ!なのに政府の人間だと明かしてどうする!速いことあの本を回収して記憶を消さなければならないだ!」


2人が揉めている今がチャンスだ、早いこと逃げよう、しかし汽車に戻るのはダメだ。また同じことになりかねない、なら学校に直接逃げるのがいいだろう。


「Mr.クランドール、個室に飛び込め。」


小声でクランドールに話しかける。


「逃げれるのか?」


「大丈夫だ、合図したらすぐに行くぞ、3、2、1、今だ!」


二人は一斉に個室に飛び込み、ドアを閉めた。


揉めていた二人の男はそれに気づき、ルーカスが足早に個室の扉を開けるがそこには二人の姿どころか荷物すらなく空っぽの空間に新聞紙が落ちているだけだった。

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