18話:広がる波紋と新たな興味


 ――暗闇の中、火花が散り、爆発音が轟く。


 剣士の俺は視界を失いかけながら、次々と襲いかかる敵を必死に捌いていた。


だけど、もう限界だ。


「このままじゃ……くそ、やられる……!」


 絶体絶命の危機で悲鳴を上げようとした瞬間、現実世界に引き戻される。

 またしても配信ソフトがフリーズして画面が止まったのだ。


「うわっ、マジかよ。勘弁してくれ……」


 夜更けの自室で、どうにか再起動を試みながら、思わず苦笑する。


 先日の文化祭ステージで一度は“成功”を実感した俺だが

何かとトラブル続きの日常は変わらない。


 しかも、最近になって「文化祭配信の切り抜き動画」がSNSで拡散され

 俺=ナールに思わぬ注目が集まりはじめている。


「まさかこんなにバズるとは……ちょっと怖いな」


 そうぼやいたところで、スマホに新着通知が来る。


 ネットに上がったまとめ記事――


「謎の高校生VTuberデュオ“ナール&CAS”が凄い! 文化祭映像が話題に」


――そんな見出しが目に飛び込んできた。


「……ふぇぇ……」


 声にならない悲鳴を漏らし、思わず画面を二度見した。


 どうやら俺たちが文化祭でやったステージ配信の一部が切り抜かれ

 ツンッターや動画サイトでシェアされてるらしい。


 コメント欄には「本当なら伝説級」「場所特定班出動w」

 「同じ学校にこんな人いるの羨ましい」など騒がしい書き込みが並ぶ。


 どこまで本当に広まっているのか実感はわかないが

 少なくとも一部では大きな注目を集めている。


「……こりゃ、学校にバレたらヤバいかもな」


 俺は頭を抱える。


周囲からの興味が高まるほど、リスクも大きくなる。


 でも、同時にワクワクする気持ちもあるのが正直なところ。



◇◇◇



翌朝――教室


「よー優、お前SNSでちょっとしたスターになってるじゃん?

まだ特定されてねえけど時間の問題かもな!」


 青柳 翔太がニヤニヤしながら茶化す。


 すでに“二人がVTuber”と知っている彼は、仲間として興味津々だ。


「やめろよ、マジでバレたら学校から怒られるって……」


「でも嬉しいんでしょ?」と三浦さんも横から顔を出す。


「ネット見たら好意的なコメント多かったよ。

ナールの実況トークが面白い、文化祭の掛け合いがよかったって。」


「う……それはうれしいけど。複雑だよな」


 俺が俯くと、茅ヶ崎 香澄――


 つまりVTuber「CAS」 ――も「実は私も少し心配」と言葉を重ねる。


「ネットで話題になるのはありがたいけど、身バレのリスクが高くなる。

学校や親にバレたら制限されるかもしれないし……」


 生徒会長としての茅ヶ崎さんは、下手すると学校から厳重注意を喰らう立場だ。


 そこで翔太が腕を組み


「ま、俺たちが騒ぎすぎなきゃ大丈夫だろ。

むしろチャンスなんじゃね? こんなにバズること、滅多にないし。」


 とおおらかに言う。


「チャンスか……なるほど、そうかもしれない」


「そうだよ。これをきっかけに何か新しい企画をやってみれば?

CASとナールをもっとバズらせるとか」


 三浦さんが目を輝かせる。


「私も力になりたいな。例えば衣装や演出とか……!」


「やりたい気持ちはあるけど……家庭とか学校の許可を考えると難しいかも。

 文化祭は特例だったしね」


 茅ヶ崎さんが苦笑いするが

 表情から“もっとやりたい”という本音が漏れているのがわかる。


 そのとき、不意に視線を感じて後ろを振り向く。


 誰かに見られていたような……しかし廊下を覗いても人影はない。


 気のせいか?


「なんだ、今の視線……?」


「どうしたの?」


 茅ヶ崎さんが首をかしげる。


俺は「いや、なんでもないよ……」と曖昧に返す。



◇◇◇



放課後――生徒会室にて


 茅ヶ崎さんが先生に呼び止められ

 「ネット配信がバズってるらしいけど、トラブル起こすなよ」と釘を刺される。


 また、他の教師から

「文化祭は終わったんだから、もう刺激的なことはしないようにな」


 など牽制の言葉も。


 茅ヶ崎さんは苦い顔で戻ってくる。


「やっぱり先生たちはネット活動に良い印象はないみたい……」


「SNSで盛り上がってるなら

 ちゃんとルールを守りながら配信続ければいいんじゃね?」


 翔太が意気込む。


「そうだね。まずは家のほうも考えないと。

香澄の親は厳しいし……鳴海くんは?」


 三浦さんが問いかけ、俺は肩をすくめる。


「いやー、俺も親が『勉強は大丈夫なのか』とうるさいよ。

まだバレてないけど、時間の問題かも」


 すると、茅ヶ崎さんが小さくため息をつく。


「この先、どうなるのかな……バズるのは嬉しいけど、不安も大きい」


「そうだね。僕らでやれることを考えてみよう。

ちゃんと進路も考えて、あまり無茶はしない形で配信を続けるとか……」



◇◇◇



夕方――帰り道


 一人で校門を出ると、背後に人影を感じる。


 ふと振り返ると、先ほどと同じ視線……しかし誰もいない。


 胸にざわつく不安。


「マジで気のせい? なんか怖えな……」


 ちょっとしたホラーを感じて、急ぎ足で帰る。



◇◇◇



夜、自室


 スマホをいじると

 例の「文化祭配信切り抜き動画」の再生数がさらに伸びている。


 コメントには「これ、もしかして○○高校?」「生徒会長がCASって本当?」

 「続編見たい!」と混沌としてきた雰囲気。


 俺は思わず眉をひそめる。


「これ、波紋ってレベルじゃないな……どう収拾つけるんだ?」


 そんな不安と期待が入り混じったまま、画面を閉じ、ベッドに倒れ込む。


 ここにきて「さらに話が広がるかもしれない」「新しいイベントを開く?」

 など頭を駆け巡り、眠気はまるで訪れない。


 ――こうして俺たち“裏アカ同盟”の新たな日々が幕を開けた。


 次なるドラマの訪れを予感させる、不穏と刺激の入り混じった夜だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る